【置かれた場所は途上国】 インド■上■ 神さまが創られた尊い人格として 蘇畑光子 2018年1月11日
わたしは、主にインド、バングラデシュ、ネパールで実施している事業を担当しています。普段は東京の事務所にベースを置き、担当事業のモニタリング、予算管理、報告書作成、新規事業の申請書作成などを各国のワールド・ビジョン(WV)事務所スタッフと連携して行いつつ、年に数回現地へ出張する、というのが基本的なスタイルです。現場との距離がある分、なるべく各国のWVスタッフと密にコミュニケーションを取り、自分でも担当国や事業地についての理解を深める努力をしていますが、やはり現地へ行き、自分で見聞きしなければ分からないことが多くあることを実感しています。
特に強く実感するのは、事業地の中でも特に弱い立場に置かれた子どもたち、人々に出会った時です。例えば昨年、インドで実施している事業の活動レポートに、「指定部族の人々が他のコミュニティの人々と対立し、日雇い労働の仕事を取り上げられ、収入を絶たれてしまった」という短い一文がありました。
実際に初めて指定部族(インド憲法で定められた少数民族集団)の人々のコミュニティを訪問してみると、土地を持たない彼らは、幹線道路と畑に挟まれた、政府から支給されたわずかな土地で暮らしていました。電気や下水道も未整備で、家はダンボールやビニールシートなどを組み合わせた非常に簡素なものです。集まってくれた人々は、「大雨が降ると、家の中に水が入り込んでくる」「子どもがサソリや蛇に襲われることがある」と話してくれました。この地域に指定部族の人々が多く住んでおり、弱い立場に置かれていることは知っていましたが、周辺地域との明らかな環境の差に強い衝撃を受けました。短い文章の背後には、自分と同じ生身の人間が生きている。そんな当たり前のことを、改めて教えられました。
短い出張期間で、現地の言葉を話せないわたしが得られる情報はわずかかもしれません。それでも、事業地の子どもたちや人々と出会う時、「支援を届ける相手」としてではなく、一人ひとりを神さまが創られた尊い人格としてとらえ、自分も心を開き、相手のことを知る努力を続けていきたいと思っています。
そばた・みつこ 支援事業部開発事業第2課プログラム・コーディネーター。恵泉女学園大学卒業後、2006年7月にワールド・ビジョン・ジャパン入団。国内でのファンドレイジング、広報を担当した後、2013年4月より支援事業部に所属。南アジア諸国での支援事業の監理を担当。