「クリスチャントゥデイ」従業員 独占インタビュー 〝これまでの説明と食い違うことばかり〟 2018年3月1日
「クリスチャントゥデイ」をめぐる状況が日々刻々と動いている。前号でも紹介した2月8日付の従業員による声明が、「クリスチャントゥデイ」サイトにアップされて間もなく削除され、その後、それまで存在していたスタッフ紹介のページも削除。記事をアップするための管理画面に従業員がアクセスできないという事態も報告された。さらに翌9日には編集長の交代も告示されるに至った。同社の説明によると「雇用契約が1月末日で満了したのに伴い、本紙論説主幹の宮村武夫が2月より編集長に再就任した」という。総会議長声明を発表した日本基督教団の統一原理問題連絡会が説明会を2月23日開催するに先立ち、営業担当のYさんが本紙の独占インタビューに応じた。
――いつごろから「クリスチャントゥデイ」のあり方に疑問を抱くようになったのでしょうか。
昨年の12月、編集長の雜賀(さいか)信行氏が裁判資料になっていた元信者による証言を見せるよう社長の矢田喬大氏に求め、それをわたしも見たのが大きなきっかけです。月2回の編集会議では毎回のように取材拒否への対策について話し合ってきましたが、どう考えても矢田氏の説明に無理があるわけです。その矛盾点を指摘するたびに同じ話を繰り返されました。何か隠さなければならない重大な理由があるのだろうなと感じました。
すでに11月ごろから給与の遅配をめぐって話し合いを重ねるようになっていました。矢田氏が資金の管理もすべて担っていたのですが、そもそもその動きが不透明で不信感を募らせていたのです。わたしたちが指摘するまで、財務諸表などの会計資料が会議に提出されたことは一度もありません。今年最初の編集会議(1月10日)で、改めて説明責任を果たすようにと迫ったところ、初めて3カ月分の収支決算書を見せられました。しかし、数字がまったく合わないどころか多額の負債を抱え、経営が破綻状態であることが分かったのです。この間のずさんな経営状況も明らかになりました。
――取締役会は機能していたのでしょうか?
存在自体がほぼ架空で、機能していませんでした。2011年に代表取締役会長に就任した峯野龍弘先生(ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会主管牧師)から協力を呼び掛けられただけの取締役はいますが、具体的にコミットしていた人はいませんでした。それ以前の経営陣についても会社は伏せていました。つい1カ月前の時点で初めて自分の名前が挙げられていることを知ったという取締役もいます。監査役の佐々木満男氏(弁護士)からは、2012年以降、矢田氏と会って経営や現状報告を受けた覚えはないと聞いています。
――編集長交代の経緯についても主張が食い違っています。
脳出血のため1月11日に雜賀氏が倒れると、その2日後には仮の編集長交代を会社の新年会で告げたのです。矢田氏は当初、「峯野先生の指示で雜賀氏を解雇した」と説明していましたが、峯野氏本人に確認したところ、そんな事実はありませんでした。わたしたちが信頼している編集長への会社側の対応はあまりにお粗末で冷たく、常識的に理解できる話ではありません。
「従業員声明」社の不誠実さに耐え切れず
――教団の総会議長声明については対策を協議していましたか?
新たな声明が出されたら決定的だと考えていましたので、何度も「会社として教団と交渉するべき」「クリスチャンとして自ら申し入れ、当事者間で話し合えば和解できるはず」と進言してきました。なぜ、わたしたちだけが外部との話し合いに駆り出され、当事者である矢田氏と内田周作氏(創立期からのメンバー、現在副編集長)は沈黙を続けるのか理解できませんでした。しかも矢田氏は1月27日付で声明が出る直前まで、「総会議長の石橋秀雄先生と会って話をつけた。声明は出ない」と社内に説明していたのです。
2008年に出された山北宣久総会議長(当時)による声明についても、「クリスチャントゥデイに反対する教団内勢力の圧力があり、自身の意に反して出さざるを得なかったと矢田に釈明していた」という説明を繰り返してきましたが、山北先生本人に確認したところ、それもまったくの虚偽でした。当時から当社のスタッフが身分を偽り、嘘を繰り返していたので、信用できないと山北先生も感じていたそうです。
2月1日に従業員全員が集まる会議を前に、法務局に行って関連会社の登記簿を確認し、過去の裁判記録も全文閲覧しました。矢田氏は東京ソフィア教会や張在亨(ジャン・ジェヒョン)氏、韓国クリスチャントゥデイとの接点もないと明言してきたのに、記録として写真に残っていますし、これまでの説明と食い違うことばかりでした。矢田、内田の両氏とも東京ソフィア教会が母教会だということ、さらに両氏の妻はあいのひかり教団(元東京ソフィア教会などの信者によって作られた教団)の宣教師であることも認めました。
27日に教団の声明が出てからは会社にも記者個人にも問い合わせが殺到したのですが、個別に説明することは止められていました。矢田氏はその時点で記者会見を開くと宣言していましたが、結局これまでも説明責任は果たしてきたからという理由で履行されませんでした。
――2月18日にアップされた「根田祥一氏による『魔女狩り』騒動に関して」と題するクリスチャントゥデイの記事には、8日に出された「従業員声明」について「社外の人物が作成に深く関与したという情報がある。……社外の何者かが、従業員声明が出るよう企て、従業員たちに教唆し、さらには草案自体を作成した可能性」と書かれています。
まったくの嘘です。文案を作ったのは雜賀氏と記者の2人です。名を連ねた従業員らには非常に心苦しい思いと深い葛藤がありました。声明を出すこと自体、社外の誰にも相談していません。これ以上この状態を続けるのは対外的に不誠実だと考え、踏み切りました。
――「従業員声明」では「取締役会を通して申し入れ」をするとしていましたが。
「従業員声明」を出した後、一部の取締役が初めて顔を合わせ、今後のことを協議しました。その時、わたしは異端疑惑についてもたくさん資料を用意して臨んだのですが、何を突き付けても、うまくかわすばかりなのでこれ以上は無理だと判断しました。これだけ多くの読者を抱え、メディアとして影響力もあるはずでしたが、矢田氏にとっては経営も社員も、支えてくださる牧師たちも眼中にないのだと思いました。
矢田氏とは社内でも密に連絡を取ってきましたし、一緒にお祈りもしていた間柄で、言うことを聞いてくれる存在だと期待されていたのかもしれません。そんな部下が反旗を翻したので驚いているでしょう。「声明」を出したわたしたち従業員も、決して個人攻撃をしたいわけではなく、むしろ背後にある問題を明らかにしたいだけなのですが……。問題の鍵は判決文もさることながら、裁判資料にあります。
――クリスチャントゥデイを名乗らない複数の裏アカウントも運営していましたよね。
そうだったんですか? 初めて知りました。とにかく分からないことだらけの運営でした。「実は……、実は……」と説明が二転三転し、何度聞いても質問したいことが増えていく一方でした。
――もはやクリスチャントゥデイだけの問題ではないと思います。
その通りです。矢田氏は競合紙が妨害しているだけという敵対構造を作りたがるのですが、そんな小さな問題ではありません。また、単なる労使問題、経営に対する不満が噴出したという話でもありません。両氏以外の記者、従業員、寄稿者は本物のクリスチャンだと思っています。なぜ「疑惑」が残り続けたのかと言えば、彼らの背景に問題があるからです。そこを明確に説明してくれれば済むはずなのに。これまでに配信した記事はすべて〝本物〟ですから、誇りを持っています。「従業員声明」に名を連ねた一人ひとりの文書伝道への使命は、今なお守られていると信じます。
――貴重な証言をありがとうございました。