【置かれた場所は途上国】 カンボジア■上■ エネルギーにあふれた国 池内千草 2018年3月1日
わたしは2011年9月から2016年6月まで5年9カ月間、人身取引の地域プログラム・マネージャーとして、カンボジアの首都プノンペンに駐在し、拡大メコン地域6カ国(中国南部、カンボジア、ラオス、タイ、ミャンマー、ベトナム)に従事しました。カンボジアに駐在する以前に、タイで6年間生活した経験があったため、昔の古巣に戻るような気持ちでカンボジアに移動したのですが、タイと国境を接するカンボジアとはいえ、さまざまな面でタイとは違い、移動した当初からいろいろな驚きとチャレンジに遭遇した日々になりました。
カンボジアに駐在し始めた当初、わたしは毎朝トンレサップ川とメコン川の沿岸から20分程度トゥクトゥクに乗って、事務所に通っていました。通勤路には王宮があり、王宮の前には人々がお参りできる祠が設置されています。その前にたくさんの人々が集まり、お花とお線香を備え、お祈りをしています。王宮の前を通り過ぎると、道の両側に散髪をする露店が立ち並ぶエリアに差し掛かります。そこでは大人も子どもも(なぜか男性が多かったのですが)椅子に座って散髪をしてもらっており、これを見るのも毎朝の恒例行事でした。その他、大きなビニール袋いっぱいに野菜やパンや雑貨など、さまざまなものを詰め込み、バイクの前と後ろと両側に積んで移動する人。後部席の両側に鶏を何羽もつるして市場へ向かう人。子豚を括り付けて移動する人など、人々の生活が何にも覆われることなく、むき出しで目の前で繰り広げられており、生きるエネルギーを直接感じながら、「カンボジアは元気なエネルギーにあふれた国だなぁ……」と感じました。
満員の通勤電車に乗って、朝から疲れた人々が、暗いトーンの洋服を着て活気もなく移動する
東京の朝を思い浮かべ、カンボジアの未来がなんだか輝かしいもののように見えるものでした。
(写真提供・協力:ワールド・ビジョン・ジャパン)
いけうち・ちぐさ 東北大学大学院修士課程修了後、私立高等学校にて英語講師として勤務。その後タイ王国チュラロンコン大学大学院タイ研究講座を修了。2003~2006年の3年間、タイの国際機関や日本のNPOなどでインターン・コンサルタント・国際スタッフとして契約ベースで勤務。帰国後、千葉の財団法人、海外職業訓練協会勤務を経て、2008年ワールド・ビジョン・ジャパン入団。2010年から6年間人身取引対策事業のためにカンボジアに駐在。現在、支援事業部開発事業第1課配属。