【列島縦断 書店員日記】 売りたいから売るのか、売れるから売るのか 内藤優祐(CLCブックスお茶の水店) 2018年4月1日
前回に引き続き「キリスト教本屋大賞」についての日記です。「直木・芥川賞に続く賞を」というコンセプトのもと、書店員と出版営業の有志で始まったのが本家の「本屋大賞」。最初は危ぶまれていましたが、今では出版業界におけるこの20年での最大の成功となりました。
しかし、回を重ねるごとにキャッチコピーの「書店員が今一番売りたい本」ではなく、ただの売れた本の大々的な再紹介に過ぎないんじゃないか?との批判も上がるように。昨年はついに恩田陸の『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)が直木賞と本屋大賞のダブル受賞となってしまいました。
書店員も商売。自分の好みでない書籍もがんばって売るし、いまいちだと思っていても人気があれば平積みします。書店は自分の趣味を開陳する場ではなく、あくまでお客様が求めていらっしゃる商品をご用意する場だからです。しかし気づけば自分が売りたいから売っているのか、それともただ売れるから売っているのかの境目があいまいになることもしばしば。
しかし、お客様が求めていらっしゃるのはそんな株取引みたいな右から左に商品を流すだけの書店じゃないはずです。「本屋大賞」が大成功を収めたのは、書店員という書籍販売のプロならきっと自分の知らない素晴らしい本を紹介してくれるに違いないというお客様からの期待があったからなのだし、「キリスト教本屋大賞」もそういう根本的なところを忘れてしまってはいけないわけです。
「売れたから」「手ごろだから」「人気だから」ではなく、本当に「売りたい本」を選んでいるのか! わたしは全国のキリスト教書店の書店員にそう強く問いかけたい! すでに2月末日で投票は締め切られていますが……。
今年からはCLCブックスやいのちのことば社、カトリック系のサンパウロも投票に参加できるようになりました。自社商品には投票できないという抜け目ないルールがあるので、きっと各店で一番おすすめの1冊が選ばれるはず! ご期待ください。(ないとう・ゆうすけ)
→ 次号は大阪キリスト教書店