【聖書翻訳の最前線】 旧約聖書①「神のかたち」(創世記1章27節) 2018年4月11日
新翻訳の聖書はどこがどう変わるのか。
翻訳中の「聖書協会共同訳」を例に、その最前線をレポートする。
旧約聖書
①「神のかたち」(創世記1章27節)
「神のかたち」は、長い間、人間の尊厳を表す重要な言葉とされてきました。また、過去百年程は、人格的応答や人間の使命を表しているとも考えられてきています。最近では古代中近東の研究の発展によって、新たな知見が加わりました。
人間が「神のかたち」に造られたとは、人間が世界を正しく治めるために造られたという視点です。
神は人を自分のかたちに創造された。
神のかたちにこれを創造し
男と女に創造された。
[聖書協会共同訳]
「かたち」と訳されたヘブライ語の「ツェレム」は七十人訳ギリシア語旧約聖書ではエイコーンと訳されました。そのエイコーンが、新約聖書では、キリストとキリスト者を指して使われています。
(キリストは)見えない神のかたち(エイコーン)(コロサイ1章15節)
(信仰者は)主と同じかたち(エイコーン)に変えられていきます(第二コリント3章18節)
世界を正しく治めるべく造られた人間は、アダム以来、罪のためにその務めを十分に果たせないできました。しかし、キリストが罪のない人として来られて、世界を正しく治め始めてくださいました。そして、キリスト者もキリストに似せて変えられ、最後には、キリストと共に世界を治めるようになる(黙示録22章5節)とあります。
ツェレムとエイコーンの訳語として、統一して「かたち」を用いたことで、創世記から黙示録を貫く一つのメッセージがより明らかになりました。
(『聖書 聖書協会共同訳―特徴と実例』より)