キリシタンと被差別部落 髙山文彦氏が浦上の課題を語る 2018年5月11日
『生き抜け、その日のために――長崎の被差別部落のキリシタン』(解放出版社)など、被差別部落や部落解放運動についての著作が多い作家の髙山文彦氏の講演会が4月26日、練馬区役所アトリウムで開かれ、約190人が参加した。練馬人権センター、原水禁練馬委員会、部落解放同盟練馬支部からなる、「『原爆と沈黙(長崎浦上)』髙山文彦講演会実行委員会」が主催した。
講演では髙山氏が、2017年8月にNHKで放映されたETV特集『原爆と沈黙―長崎浦上の受難』の内容に沿って浦上地区の歴史と現状を紹介した。
原爆が投下された浦上地区は400年前に「浦上キリシタン」と呼ばれ、19世紀半ばまで迫害を受けた人たちの末裔や、皮革業などで生計を立てて暮らす被差別部落民とされていた人たちが暮らしていた。明治の黎明期に、新政府が禁教令を出したことで、両者はそれぞれ捕縛する者とされる者となり、一村総流罪となったキリシタン弾圧事件「浦上四番崩れ」の発生により両者の溝は決定的となり、現在も和解には至っていない。
髙山氏は、スペイン出身で日本に帰化したイエズス会神父、結城了吾(ディエゴ・パチェコ、1922~2008)の登場により、両者が和解への道を模索し始めたと紹介。「歴史的和解は難しいと思うがそうなってほしい。皆で歴史を共有するところから始まるだろう」と述べた。
最後に「部落差別を含め、差別というものはなくならないと思うが、それに向き合い営々と努力することが大切。良い人になりタブーについては口を閉ざすのではなく、お互いに言うべきことを言い、乗り越えていくのが健全な社会だ」と訴えた。