【聖書翻訳の最前線】 簡潔で締まった日本語を 2018年6月11日
(三)簡潔で締まった日本語を
聖書協会共同訳では、歌人、詩人、文学者、日本語学者などの日本語担当者が、最初から原語担当者とペアになって、自然で簡潔な日本語にするよう努力しています。
簡潔さという点では、単語レベルでは、例えば、次のような変化があります。
①詩編7編10節
詩編7編10節は口語訳では次のように訳されていました。
どうか悪しき者(ラシャ)の悪を断ち、
正しき者(ツァディク)を堅く立たせてください。
[口語訳]
新共同訳は、この意味をより分かりやすく伝えるために次のように訳しました。
あなたに逆らう者を災いに遭わせて滅ぼし
あなたに従う者を固く立たせてください。
[新共同訳]
聖書協会共同訳では、簡潔で締まった訳文を目指しているため、多くの論議の末、口語訳の訳語が復活することになりました。
悪しき者の悪を絶ち
正しき者を堅く立たせてください。
[聖書協会共同訳]
同じ理由から、「恵みの御業」(ツェデカ)は、「義」 あるいは「正義」となり、「主の慈しみに生きる者」(ハスィド)は、「主に忠実な者」となります。例えば、詩編36編7節は次のようになります。
恵みの御業は神の山々のよう
あなたの裁きは大いなる深淵。
[新共同訳]
あなたの正義は神の山々のよう
あなたの公正は大いなる深淵。
[聖書協会共同訳]
その他、文章全体としても、自然さ、また、簡潔さを目指しました。
(『聖書 聖書協会共同訳―特徴と実例』より)