【東アジアのリアル】 宗教・キリスト教の中国化!? 松谷曄介 2019年1月11日

 習近平体制は「偉大な中華民族の復興」をスローガンにナショナリズムをかき立て、「中国スタンダード」の政治・外交・貿易を展開しているが、これに関連して近年では「宗教の中国化」をも強調するようになってきた。「中国化」といっても宣教学的な意味で論じられる土着化や文脈化ではなく、その内実は「中国共産党への従属化」また「非西洋化」を強いる政治的なものだ。

 その一環としてなされる「キリスト教の中国化」はさまざまな形をとって実施される。まず、「十字架」が西洋の宗教のシンボルであり中国共産党が統治する中国にはふさわしくないとされ、2015年には浙江省で政府当局により数千カ所の教会の十字架が強制撤去の対象となった。さらに2017年から2018年にかけて、今度は河南省のプロテスタントとカトリック両方の公認教会で数千カ所の十字架が強制撤去された。政府当局はキリスト教を「西洋の宗教」と見なし、これを「中国化」する手始めにそのシンボルである十字架を撤去しようと考えたのだろう。

十字架が燃やされ強制撤去された河南省の教会

 

 また、プロテスタントの非公認教会「家庭教会」に対してはより厳しい取り締まりがなされるようになった。特に、過去十数年の間に急成長した「都市型新興家庭教会」は、従来の秘密裏の小規模の家庭教会ではなく、市民社会の中に公に位置付けられる教会形成を目指す「公開化」路線をとり、若者層・知識人層・富裕層を多く引きつけ、政府当局もその社会的影響力を無視できなくなっていた。これらの家庭教会は中国政府の管理・統括を忌避して政府に登録を拒否し続けているが、これらを「中国化」するということは、政府への登録義務付けをさらに強化することを意味している。

 そこで政府当局は数年かけて宗教政策を再考し、2018年には従来の宗教事務条例に登録義務付けや罰則規定を厳格化した改正を加え、満を持してキリスト教に対する「中国化」を強化し始めた。まず北京の代表的な家庭教会として知られていた錫恩(シオン)教会、また南方の広州でよく知られていた広州聖経帰正(=改革派)教会に対して2018年春ごろから締め付けを強め、9月には「違法集会」として両教会を閉鎖に追い込んだ。そして、先月12月9日、政府当局は中国内外で最も影響力のある家庭教会として知られていた成都・秋雨之福聖約教会に対して大規模な取り締まりを行い、同教会の王怡(おうい)牧師夫妻を「国家政権転覆扇動罪」の容疑で逮捕・拘束した(本号5面参照)。このことは、政府当局が「中国化」を拒む都市型新興家庭教会を特に標的とし、それらを本気で潰そうとしていることを内外に強烈に印象付けた。

 中国政府はウイグル族をはじめとするイスラム教徒やチベット仏教徒に対しても「中国化」の諸政策を実施し管理・統制を強めているが、殊にキリスト教の背後にはアメリカをはじめとする西洋諸国の影響力があると見ているため、より大きな警戒感を抱いている。またキリスト教の数的成長を不安視しているのも間違いない。政府に登録している公認教会であっても、2010年以来2305万人とされていたのが、2018年には3800万人と発表されている。これに非公認の家庭教会および公認・非公認のカトリック教会を含めれば、キリスト教人口は共産党員約9千万人に拮抗するかあるいはそれを超える人数になっていると考えられる。

 しかし中国政府が最も恐れているのは、中国共産党の権威に拮抗し得るキリスト教の「神の権威」だ。「宗教の中国化」の一環として推進されている「キリスト教の中国化」とは、最終的には、この「神の権威」を中国共産党の権威の下に従属化することを目的としている。この「権威と権威の戦い」が2019年にはどのようになっていくのか、目が離せない。

松谷曄介
 まつたに・ようすけ 1980年、福島生まれ。国際基督教大学、北京外 国語大学を経て、東京神学大学(修士号)、北九州市立大学(博士号)。日本学術振興会・海 外特別研究員として香港中文大学・崇基学院神学院留学を経て、日本基督教団筑紫教会牧 師、西南学院大学非常勤講師。専門は中国キリスト教史。

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