〝若者を教会に…〟の願い ネット番組「株式会社ニシノコンサル」 出演した牧師・田中秀亮さんインタビュー 2019年1月11日
2018年10月、お笑い芸人の西野亮廣さん(キングコング)と若手実業家の前田裕二さん(SHO
WROOM代表)がクライアントの悩みに答えるネット番組「株式会社ニシノコンサル」(無料イン
ターネットテレビ局・AbemaTV、番組公式ツィッター:https://twitter.com/nishino_consul)に、
日本福音キリスト教会連合(JECA)八栗シオンキリスト教会牧師の田中秀亮(ひであき)さんが出演し、話題となった。
大学卒業後、キリスト者学生会(KGK)での働きを経て聖書宣教会で学び、2016年から同教会の牧師に就任した田中さん。満を持して持ち込んだ相談は、「若者を教会に呼びたい!」という多くの教会も抱えているであろう切実な願い。
八栗シオンキリスト教会がある香川県牟礼町は人口約7千人。毎週の礼拝に集う数十人の信徒はほとんどが高齢者。これまで、チャペルコンサートやオカリナ教室にも取り組んできたが――「それでは若者は集まらない」と西野さんに一蹴される。「興味がない人に聞いてもらうには、まずは田中さんが面白くなるのが、手っ取り早い」「信じるには双方向の関係性が必要」など、実践的なアドバイスが多々飛び出した。
放送から2カ月。田中さんに、出演の感想とその後の変化などを聞いてみた。
教会外からの助言を糧に
「エンタメ」と「支援」の両側面から信頼関係築く
――今回、「株式会社ニシノコンサル」に出演された経緯を教えてください。
以前から、教会に若い世代が来るためにはどうしたらいいかと教会内で話し合ってきました。私は、これまで教会が取り組んできたことを繰り返すだけでは教会は大きく変わらない、若い世代が教会に来ることは難しいだろうと考えていました。ですから、何か新しいことに、これまでとは違ったことに取り組まなければならないという強い思いがありました。
「ニシノコンサル」は、始まったころ(2018年8月)から見ていました。1組の相談者に1時間にもわたって真剣に相談に乗り、しかも、漠然としたアドバイスではなく、明日から始められる具体的なアドバイスがいくつも提示されていました。これは番組名の通り本気の「コンサルティング」だと思い、私たちの教会も相談できたらいいなと思いました。
また、私たち教会の悩みをクリスチャンだけで考えていてはそもそも不十分だろうという思いがありました。ですから、クリスチャンではない方々に、しかも若い人たちから支持されている彼らに、この悩みをぶつけてみることは、目的から照らすと理にかなっているのではないかと思いました。
実は「ニシノコンサル」の前に、ホリエモンこと堀江貴文さんにも相談していました。彼のメールマガジン「堀江貴文のブログでは言えない話」には「Q&A」コーナーがあるのですが、そこで教会が検討していたあるアイディアの是非を訊いてみたことがあります。
――牧師が教会の課題を信者以外(ノンクリスチャン)に相談するという発想が斬新に思えましたが、日ごろから心がけていることなどはありますか?
ノンクリスチャンの若者に来てほしいわけですから、その方々がどんなことを考え、どんなことに時間を費やし、どんなことに興味をもっているかを把握する必要があると思います。つまり、その人たちの目線で教会の活動を吟味してみるということです。
教会の活動は聖書から必ずしも明確に導かれていないことも多くあります。それを続けてもよいし、続けなくてもよいのです。例えば祈祷会を行う曜日は水曜日でなくてもよいのです。ですから、変える必要があると思うことは変えればよいのです。今の時代において、今目の前にいる人たちにとって(信者・未信者問わず)、最適解とは何かという視点を大切にしています。
――「若者を教会に呼びたい」という願いは全教会共通かと思いますが、若者が教会に来ない主な原因は何だとお考えでしょうか。
いくつかの要因があるように思います。以下に述べることは私たちの教会を見て思いつくことです。ただ、他の教会においても重なるところはあるかもしれません。
一つ目は、未信者にとって教会に行く理由が見当たらないということです。未信者にとって教会はもう完全にでき上がっているところ(神を信じる熱心で真面目な信者だけが行くところ)に見えるので、教会に行く理由が見当たらない人が多いのではないかと思います。彼らの参加する余地(余白)が感じられないから、教会に来ないのです。何か楽しいことがあるから行ってみようとか、悩みがあるから教会に相談しに行こうと思い至る人が少ないのではないでしょうか。それは教会をそういう場として認識していないからだと思います。
もちろん、キリストに呼び集められた者たちの群れが教会ですから、未信者の方々にすぐには理解されない事柄(例えば聖餐式)が教会にあることは確かです。それを維持しつつも、他方で、まったくキリスト教の「キ」の字も知らない方々が教会に興味や関心を持ち、教会の「入り口」を入りやすくする設計は必要なことだと思います。そのために、あらゆる可能性を検討して、貪欲に取り組んでいきたいと思っています。
二つ目は、教会堂が入りづらいことです。番組でもいじられていましたが、建物の外観からして「一度入ったらしばらく抜けられない」というイメージが未信者の方々に持たれやすいのではないかと思います。
もし私が別の宗教施設に入ろうとしたら、やはり同じようなイメージを持つのではないかと思います。教会の実体の本質は、キリストに呼び集められたキリスト者(人)であり、教会堂(建物)ではないと私は信じています。どの場所で、どのような建物で礼拝するかは本質的なことではないと私は思っています。ですから、未信者の方々にとって入りやすい空間を先に創出し、そこで礼拝を行うという順序で教会堂の設計を考えてもよいのではないかと思います。まずクリスチャンがイメージする教会堂ありきではないということです。オシャレなカフェがあって、そこに行ってみたら、実は礼拝堂としても利用されていたというのでもよいかと思います。
三つ目は、教会のアピールが圧倒的に不足していることです。教会でコンサートやクリスマス会があれば、チラシの折り込みや配布などはしてきました。ただ、ホームページ、SNSやYoutubeなどを利用したWeb上でのアピールは、圧倒的に不足していました。どんなに素晴らしい内容の本を書いても、誰にも読まれなければその本の素晴らしさは誰にも知られません。同様に、どんなに素晴らしい聖書のメッセージを語り、素晴らしいことを教会で行っていても、それが誰にも知られなかったらとてももったいないことです。教会は概して、世間に知られ、世間からの評判を得ること、人気を得ることに対して抑制的であるように思います。その基本スタンスは理解できます。
確かに、ただ人気を取ってアイドル(偶像)になることが教会の目的ではありません。しかし、それを気にし過ぎてなのか、教会は自己アピールに本気で取り組んでいないように思います。まさにその点を変えなければならないと今強く思っています。教会の自己アピールの最終的目的を、「少しでも多くの方々が教会を通してキリストの福音に出会うこと」と私たちがしっかりと軸に据えているならば、世間に大々的に、斬新なアピールをしても構わないと私は思います。
ということで、遅ればせながら私たちの教会でも広告にまみれ死にかけていたホームページを一新し、教会のツイッターを始め、Web上でのアピールにも取り組み始めました。今後は未信者の方々にも理解できる1、2分程度のキリスト教Q&Aの動画作成に取り組んでいく予定です。
(全文は紙面で)
西野亮廣&前田裕二が「若者を教会に呼びたい」
牧師をコンサル『ニシノコンサル』10・26放送
http://www.tvlife.jp/entame/195334