イエスが使ったアラム語がシリア内戦で消滅も…と報道 2019年7月22日
イエス・キリストが使っていたとされるアラム語は、紀元後の初期に中東で広まったが、その起源は紀元前10世紀にまでさかのぼる。古代アラム語を起源とする方言は今もトルコやイラク北部など中東各地で使用されている、と古代語の専門家ジャンバプティスト・ヨン氏は言う。シリア北東部では、アラム語から派生したシリア語が今でも使われている。AFP通信がその間の事情を紹介している。
シリアの首都ダマスカス周辺には、アラム語を話す三つの村がある。その中で最も知られているマアルーラ村は、アラム語で「入り口」を意味している。周辺は、世界最古のキリスト教徒定住地の一つであり、アラム語は2000年以上もの間、使われてきた。だが、シリア国内にいるアラム語を主に話す人は減り続けており、今では数えるほどしか残っていない。
「こうした状況が続けば、アラム語は5~10年以内に消えてしまうだろう」と、専門家の1人ジョージ・ザアルールさん(62)は言う。
今日、「マアルーラの住民の80%はアラム語を話さず、アラム語を話す残りの20%は60歳を超えている」そうだ。かつてこの村には、宗教的建造物を見学したり、通りで話されるアラム語を聞いたりするため世界中から巡礼者が訪れていた。だが、2011年にシリア内戦が勃発したことですべてが変わった。
13年後半、国際テロ組織アルカイダ系反政府組織とイスラム武装勢力がマアルーラを掌握。キリスト教徒である住民の大半が家を追われた。政府軍は14年4月、7カ月ぶりに村を奪還したが、村長によると、内戦前は6千人以上いた村民のうち2千人しか戻ってきていないという。
マアルーラの住民の多くは、村から55キロほど離れたダマスカスや外国に避難した。「ダマスカスやその他の地域などマアルーラ以外で生まれた戦争世代は、まずアラビア語を学ぶ」とザアルールさんは話す。教会や修道院の中には、略奪されたり砲撃によって損傷したりしたものもあり、聖像は破壊や盗難の被害に遭った。村の唯一の幼稚園は内戦勃発後、児童の数が激減した。10年に100人を超えた入園者の数は、19年にはわずか30人未満にまで落ち込んだ。それでも「マアルーラのアラム語は、父から息子へと受け継がれる……故郷の言語だ。何物にも代えられない」と教師のアントワネット・モクさんは語っている。(CJC)
写真はアラム語訳聖書(Wikipedia)