「宗教・企業・政府」の関係めぐりテキサス州で訴訟 2019年9月23日

 米国で「チック・フィレー救済法」と呼ばれる「宗教的自由」に関する州法をめぐって、教会が市を訴える裁判沙汰となり、物議をかもしている。それは「差別」なのか。または「内面/良心/信教の自由」なのか。テキサス州サンアントニオ市で宗教と国家がせめぎ合う。一般紙の他、クリスチャニティ・トゥデイ紙など専門紙も報じている。

 現地サンアントニオ保守的「家族」協議会のメンバーが9月6日、サンアントニオ市を訴えた。同市は3~5月にかけて、サンアントニオ空港から、熱心なバプテスト派によって創立されたチック・フィレー社(CFA)の排除を審議・決定していた。排除の理由は、CFA社の寄付先が反LGBTを掲げる保守的キリスト教団体であること。直近の寄付総額は約1億7千万円(160万米ドル)に上った。

 今回の訴訟は、これらの動きへの抗議であり、テキサス州において9月発効となった「宗教的組織への支援を理由に、ある個人に政府・自治体が反対することを禁ずる」州法に基づく。事実、「家族」協議会は、サンアントニオ市を州法違反として訴訟した。

 CFA社はファストフード店でありながら日曜日は閉店しており、「日曜開店」を選択すれば、同社売上は約53億円(5千万ドル)の伸長があるとも言われる。創業者の理念として「主の日」は仕事を休むべきだからだ。それゆえ神学校卒業後の進路として「チック・フィレー」を選択する人もいる。

 テキサス州グレッグ・アボット知事はチック・フィレー社を擁護。「所有者が教会、救世軍、または他の宗教組織に寄付したからといって、どんな仕事も差別されるべきではない。テキサス州は宗教の自由を守る」と発言。一方で、「偏見の砦」「憎しみの象徴」など批判の声も吹き上がっている。

 米国における「性、政府、宗教」の問題は、労働時間の主体的選択、余暇の充実など日本社会と通底する課題も含みながら、「チック・フィレー救済法」をめぐる攻防は過熱している。

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