キリスト教学校教育同盟 「多様性の尊重と共生」めざすことを再確認 2019年9月25日
キリスト教学校教育同盟(西原廉太理事長)は9月25日、常任理事会との連名で「今・この時に私たちが大切にしたいこと――多様性の尊重と共生をめざして」と題する声明を発表。同盟の起源が「学校での宗教上の教育・儀式を禁止する『文部省訓令第12号』強制という事態に直面し、キリスト教教育の危機に立たされたキリスト教学校が、結束して偏狭なナショナリズムに抵抗したこと」にあるとし、ポピュリズム政治、自国利益優先主義、排他主義が深刻な分断と対立を招く中で、キリスト教学校が「真理を探究し、他者への共感性を持ち、さまざまな痛みや重荷を背負わされた人々の叫びに耳を傾け、異文化世界の人々と深いところでつながり、この世界・社会に仕えることのできる児童・生徒・学生を、心を込めて育て、世に送り出す」との使命を担う責任があることを改めて確認した。
同盟は全国のキリスト教学校、102学校法人341校で構成されており、時局的声明などを発するのは異例だが、9月21日の常任理事会では理事長提案が満場一致で採択された。この内容は、同盟機関紙「キリスト教学校教育」10月号にも掲載される予定。全文は以下の通り。
今・この時に私たちが大切にしたいこと――多様性の尊重と共生をめざして
2019年9月25日
キリスト教学校教育同盟理事長 西原廉太
常任理事会
今、私たちの社会は、さまざまな痛みと破れが顕在化してきています。とりわけ、現在の深刻な日韓関係の荒波を受けながら、ヘイトスピーチに代表される差別・排外主義、あるいは反知性主義が充満しています。一方では、「道徳」が教科化され、今秋には、天皇即位の諸行事が行われようとしています。また、世界の至る所で、ポピュリズム政治の横行に伴う自国利益優先主義と排他主義が、深刻な分断と対立を招いています。
こうした状況であるからこそ、私たちキリスト教学校は、児童・生徒・学生たちに、歴史を誠実に学ぶこと、多様性を尊重し、共生社会を実現することの大切さを、ていねいに伝えなければならないと確信します。
私たちキリスト教学校教育同盟の起源は、1899年に発令された、すべての学校での宗教上の教育・儀式を禁止する「文部省訓令第12号」強制という事態に直面し、キリスト教教育の危機に立たされたキリスト教学校が、結束して偏狭なナショナリズムに抵抗したことにあります。1910年に同志社で開催された「基督教教育同盟会」第1回総会で採択された規約の<目的>には、「本会ノ目的ハ基督教主義学校ニ共通ナル諸問題ヲ研究シ其ノ進歩発達ヲ計リ必要ノ場合ニハ共同ノ行動ヲ執ルニアリ」という宣言が刻まれています。訓令第12号が発布された背景には、当時の国粋主義、国家主義的思想の台頭がありました。「教育勅語」に象徴される、国家神道を規範とする道徳を中心とした国民教育の強制という事態にあって、キリスト教諸学校は抵抗運動を挑み、「必要な場合には共同の行動を執ること」を目的として、教育同盟設立へと至りました。
私たちキリスト教学校の使命、ミッションとは、真理を探究し、他者への共感性を持ち、さまざまな痛みや重荷を背負わされた人々の叫びに耳を傾け、異文化世界の人々と深いところでつながり、この世界・社会に仕えることのできる児童・生徒・学生を、心を込めて育て、世に送り出すことにあります。
今・この時に、私たちキリスト教学校は、このミッションを、しっかりと担っていく責任があることを、あらためて確認したいと思います。