ローマ教皇、性的虐待の隠蔽防止へ守秘義務を廃止 2019年12月30日
バチカン(ローマ教皇庁)は12月17日、カトリック教会内での小児性愛事件隠蔽(いんぺい)撲滅に向けフランシスコ教皇が進める取り組みの一環として、教会が司祭たちに対して定める守秘義務の対象から性的虐待などのケースを除外する方針を、公営バチカン・ニュースを通じ発表した。
教皇フランシスコは、教会関係者による未成年者への性的虐待などのケースに関し、「教皇レベルの機密」を廃止することを決定した。教皇は、教会関係者による未成年者への性的虐待等のケースで、調査や裁判への協力をより可能にするために「教皇機密」を廃止すると同時に、未成年者ポルノグラフィーをめぐる法令の一部の改正を行った。
これらの改正について、教皇フランシスコの自発教令「ヴォス・エスティス・ルクス・ムンディ」(2019年5月7日)の第1条で言及される犯罪(暴力・脅迫・権威の悪用下における性的行為、未成年者および弱い立場にある人々に対する性的虐待、ポルノグラフィー、司教や修道会長上による虐待加害者に対する告発義務への怠慢および隠ぺい)についての告発・裁判・判決に関し、「教皇機密(セグレート・ポンティフィーチィオ)」と呼ばれる、ハイレベルの機密の廃止を命ずる文書が、12月4日付で、教皇庁国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿によって署名された。
同時に、自発教令「サクラメントールム・サンクティタティス・トゥテーラ」(2001年発表、2010年改訂)中の、いくつかの項の改正が、国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿、教理省長官ルイス・ラダリア・フェレール枢機卿の署名によって行われた。これで、「聖職者による、わいせつな目的での、あらゆる方法、あらゆる手段における、18歳未満の未成年のポルノ画像の入手・所有・頒布」が、教理省管轄の最も重大な犯罪として定められた。これまで同項には、「14歳以下の未成年」と記されていた。また、今回の改正により、これら重大犯罪の「弁護士および検察官」の役を、今後、司祭のみでなく、信徒も担えるようになった。
今回の発表に関し、内外の一般メディアが速報、解説を加えている。
この規定は、外交や個人的問題、犯罪容疑など、教会の統治に関わる機密性の高い情報を保護するためのものだが、司祭や被害者が虐待を通報する妨げとなり、事件の刑事訴追を阻害しているとの批判がこれまであった。
子どものころに性的虐待の被害を受けた当事者で、教皇庁の児童保護委員会が適切な対応を取っていないとして同委員会を辞職したマリー・コリンズさんは、ツイッターに「素晴らしい知らせだ」と投稿、今回の措置は委員会の勧告に沿ったものだとした上で、「ついに本物の前向きな変化が起こった」と歓迎した。(CJC)