政教分離の侵害を監視する全国会議が抗議 「憲法原則を無視した儀式に公金」 2019年12月30日
政教分離の侵害を監視する全国会議(木村庸五、古賀正義代表幹事)は昨年12月16日、「即位礼正殿の儀」が国事行為として、「大嘗祭」が公的行為として行われたことに対して抗議する声明を発表した。同会議は声明で「日本国憲法の基本原理である国民主権に反する儀式により、天皇の即位儀式を挙行した点」を問題視し、「即位儀式のために167億円をも支出し、大嘗祭においても27億円の支出を行ったことは、憲法第89 条の定める宗教活動に対する公金支出の禁止に明白に違反します」と指摘している。全文は以下の通り。
「即位礼正殿の儀」が国事行為として、「大嘗祭」が公的行為として行われたことに抗議します」
内閣総理大臣 安倍晋三殿
宮内庁長官 西村泰彦殿
私共「政教分離の侵害を監視する全国会議」は、「即位礼正殿の儀」が10月22日に国事行為として行われたこと、「大嘗祭」が11月14-15日に公的行為として行われたことが、明白な政教分離原則違反であったこと、同時に憲法の基本原理である「国民主権」をも侵害する行為としてこれらの儀式が行われたことに抗議します。
「即位礼正殿の儀」は、新天皇が「高御座」から即位を宣言する儀式で、「高御座」は天孫降臨神話に基づく天皇の玉座を表すもので、天皇の地位が「天照大神」によって与えられ、天皇は「高御座」に立つことで「生き神」としての性格を帯びることを表す宗教儀式です。これら神話に基づく儀式を国事行為として行い、国費を支出することは重大な政教分離原則違反です。「大嘗祭」も、天皇が天照大神に国の安泰や五穀豊穣を感謝、祈念する儀式であり、天皇が神と寝食を共にし、天皇霊を継承するとされる神話に基づいた宗教儀式です。政府自身が「宗教色が強い」ことを認めています。
同時に即位礼正殿の儀にて、高御座の高い位置から天皇が言葉を述べ、それに対して国民を代表する首相が、寿詞(よごと)とよばれる天皇への誓いの言葉を述べ、天皇に対して万歳三唱をすることは、まさに自民党憲法改正草案が前文にて述べる「天皇を(国民の上位に)戴く」行為であり、日本国憲法の基本原理である国民主権に反する儀式により、天皇の即位儀式を挙行した点は非常に重大な問題です。
更にはこれらの憲法原理を無視した即位儀式のために167億円をも支出し、大嘗祭においても27億円の支出を行ったことは、憲法第89 条の定める宗教活動に対する公金支出の禁止に明白に違反します。
政府は2018年4月3日に閣議決定した式典の基本方針にて「各式典は、憲法の趣旨に沿い、かつ、皇室の伝統等を尊重したもの」と決定しつつも、これらの重大な憲法原則に違反した即位儀式を行ったことは、より深刻な問題です。こうした状態は、憲法の基本原則であっても「皇室の伝統」の前には一切が例外となること、皇室の伝統であれば、憲法原則をもってしても何ら制限することが出来ない超法規的存在であるとしているのに等しいことです。
私共、「政教分離の侵害を監視する全国会議」は、憲法原則をことごとく無視した儀式のために公金を支出しておきながら、なお「憲法の趣旨に沿った」と主張してはばからない政府の態度に驚愕しつつも、尚も同政権が憲法尊重擁護義務を負っていることを訴え、一連の憲法違反行為に抗議するとともに、憲法を遵守した政治を厳格に行うことを切に求めます。
2019年12月16日
政教分離の侵害を監視する全国会議
代表幹事 木村庸五、古賀正義
事務局長 星出卓也