『奪われる子どもたち』出版記念パネルフォーラム 執筆者登壇〝「遊べる権利」の保障を〟 2020年3月21日
富坂キリスト教センター(岡田仁総主事)は2月24日、YMCAアジア青少年センター(東京都千代田区)で『奪われる子どもたち――貧困から考える子どもの権利の話』(教文館)=写真右=の出版記念フォーラム(日本YMCA同盟、教文館共催)を開催した。同書は2016年に発足された「子どもの貧困とキリスト教」研究会の3年にわたる研究成果をまとめたもので、この日は研究会のメンバーとして執筆を担った浜田進士(青少年の自立を支える奈良の会理事長)、宮本みち子(千葉大学名誉教授)、糸洲理子(沖縄キリスト教短期大学准教授)、西島央(青山学院大学教授)、坪井節子(カリヨン子どもセンター理事長)、前田美和子(広島女学院大学准教授)、今井誠二(尚絅学院大学教授)の各氏が登壇。座長の小見のぞみ氏(聖和短期大学教授)が司会を務めた。
初めに各自、子どもの貧困、シェルター活動、若者の自立援助、ホームレス支援、女性の貧困問題を抱える沖縄など、さまざまな現場に携わってきた経験を踏まえ、執筆した各章の内容について説明。社会学、教育学、聖書学などの専門分野から「子どもの貧困」とキリスト教の子ども観、人権意識、社会貢献のあり方を多角的に研究した成果が紹介された。子どもの権利にまつわる研究は数多ある中で、キリスト教の視点を意識した類書はほとんどない。
特に、国内ではまだ研究が進んでいない子どもの「スピリチュアルペイン」に注目した前田氏は、「人はパンだけで生きるものではない」と聖書にあるように、制度面だけでなく安心できる居場所づくりなど、「社会関係資本」の再構築と「ケア」による関係の回復が必要と提起した。
ディスカッションでは、子どもが我を忘れて安全に遊べる環境・権利を保障することの大切さについて議論され、貧困の連鎖を解消する必要性、教会の果たすべき役割と可能性について深められた。
新型コロナウイルスの影響で開催が危ぶまれる中、キリスト者以外の学校関係者も含め「生きづらさ」を抱える若者たちへの寄り添いを模索する約90人が来場し、登壇者の発言に熱心に耳を傾けていた。