異例尽くしのイースター 各地で「無会衆」礼拝 NCC神学宣教委〝裁きではなく慰めを〟 2020年4月21日

 新型コロナウイルスの脅威が世界を席巻する中で迎えた4月12日。今も封鎖措置が敷かれている国や地域では、屋外映画館や駐車場で信徒らが自動車に乗ったまま参列する礼拝や、メールで集めた信徒の家族写真を会衆席に並べてミサを行う礼拝など、感染予防のためにさまざまな対策が講じられた。

 バチカン(ローマ教皇庁)では例年、教皇がサンピエトロ大聖堂のバルコニーから広場に集まった群衆に向けてメッセージを語るのが通例だが、今年は聖堂内で司祭ら数人と聖歌隊によるミサが行われ、信者らは自宅から中継で見守った。教皇のメッセージがライブ配信されるのは初めてで、世界的規模の「非常事態」にあたり、異例尽くしのイースターとなった。

 国内でもとりわけYouTube(ユーチューブ)やFacebook(フェイスブック)、テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」などの中継機能を駆使して、「無会衆」の礼拝をオンラインで共有する試みも格段に広がるなど、大きな影響を及ぼしている(写真=牧師と伝道師の2人で行われた日本基督教団早稲田教会のイースター礼拝)。

 日本キリスト教協議会(NCC)神学宣教委員会は4月10日、「新型コロナウイルス感染の危機の中で共に『祈り』を分かち合うために」と題する文書を発表。クラスター(感染集団)の発生を憂い、「細心の注意を払いながら集まり、礼拝することを選んだ群れ」や「『いのち』への脅威を避けるため集まることを断念した群れ」があることに配慮しつつ、「それぞれの決断の背景に苦悩の祈りがあります。それぞれの教会が祈りの中で選び取りをしていますが、その決断についてなお迷い、自問する群れもあるでしょう。だから今、私たちは安易に唯一の『答え』を掲げることを慎みます。安易に『答え』を掲げることは、他者を裁くことにつながります」として、「今この現実の中で、私たちは裁きではなく慰めを祈り、なおも主の福音を宣教する者でありたい」と言明した。同文書は、「物理的な距離を超えて、教会の信仰の友、そして周りの隣人の命と平安のために神に仕え、イエス・キリストにある慰めを伝えていく教会として歩ませてくださいますように」との祈りで結ばれている。

 世界教会協議会(WCC)中央委員会は4月9日、各地の加盟教会に次のようなイースターメッセージを送った。


 十字架と復活の主にある姉妹兄弟の皆さん、イースター(復活祭)を祝う時を迎えるにあたって、伝統的なキリスト者のあいさつを皆さんに送りたいと思います。これは、イエス・キリストの死からの復活に対する、また、そのことに込められた、世界に喜びと希望をもたらし、恐れと不安を打ち破る力強い解放のメッセージに対する確信を表すものです。

 キリストは復活されました! まことに、復活されました!

 今年、私たちは困難と苦痛に満ちた状況の中でイースターを迎えます。世界中に影響を及ぼしている新型コロナウイルス(COVID-19)の感染症の流行は、イースターの祝い方にも影響を及ぼしています。自分と他者のいのちを守るために、街を大勢で行進することはできません。イースターの喜びを表現しまた分かち合うための賛美歌やリタージーを教会で響かせることもできないのです。その代わりに、私たちは戸を閉ざした各自の家の中で、イースターの神秘を分かち合い、復活された主に出会うことになります。多くの方が、恐れと不安にさいなまれています。心に傷を負ったり、分裂や孤立を経験したり、家族や教会員を失ったり亡くしたりしています。

 しかし、このあまりに衝撃的で苦痛に満ちた状況にあってもなお、イースターのメッセージが勇気と希望を示す、喜びに満ちたものであることに変わりありません。

 弟子たちと復活された主との最初の出会いは、まさにこれと似た状況の中で起こりました。その時、イエスの弟子たちは恐れて、自分たちのいのちを守るために戸に鍵をかけて部屋に集まっていました。すると彼らの真ん中に復活されたキリストが、平和をたずさえて来られたのです。弟子たちは大変驚き、怯えました。「そこで、イエスは言われた。『なぜ、取り乱しているのか。……まさしく私だ』」(ルカによる福音書24:38~39)。

 復活された主は、昨日も今日も、また永遠に変わることのない方です(ヘブライ人への手紙13:8)。いのちによって死を打ち破り、希望によって恐れと不安を乗り越える力をもって、神がキリストにおいて全世界を愛し、かえりみ続けてくださっている。イースターはそのことを私たちに思い起こさせ、勇気づけてくれます。

 この状況を神の罰や怒りの現れであるなどと考える人に対してイースターは告げます。私たちの信じる神は、愛に満ちたお方であり、死ではなくいのちの源であり、いのちと愛の神であることを。「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。御子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである。神が御子を世に遣わされたのは、世を裁くためではなく、御子によって世が救われるためである」(ヨハネによる福音書3:16、17)。

 姉妹兄弟の皆さん。「キリストは復活されました!」というイースターのあいさつは、長い歴史を通して、キリスト者に、死、破壊、抑圧と隷属化、恐れ、疑い、そして不安に立ち向かう力と勇気を吹き込んできました。今私たちは新型コロナウイルスによるさまざまな困難に直面していますが、イースターを祝うこの時、私たちWCCが、祈りにおいて、また、私たちの共通の信仰と復活の主にある希望に固く立つことにおいて、皆さんと連帯していることを改めてお伝えしたいと思います。「死よ、お前の勝利はどこにあるのか。死よ、お前の棘はどこにあるのか」「私たちの主イエス・キリストによって私たちに勝利を与えてくださる神に、感謝しましょう」(コリントの信徒への手紙一15:55、57)。

世界教会協議会(WCC)中央委員会を代表して
(翻訳・村瀬義史=関西学院大学教員)


 教皇フランシスコはライブ配信されたイースターメッセージの中で、世界が直面する危機を前に「今は無関心・利己主義・分裂・忘却の時ではない」と強調した上で、次のように述べた。

 「無関心、利己主義、分裂、忘れること、これらのことばは、今このときに決して聞きたくないことばです。それらをあらゆる時代から締め出したいと思います。恐れと死に圧倒されるとき、つまり私たちの心と人生における主イエスの勝利を受け入れられない時、これらのことばが優勢になるように思われます。永遠の救いへの道を切り開くことによって、死をすでに打ち負かした主は、私たちの乏しい人間性という暗闇を一掃し、終ることのないご自身の栄光の日へと私たちを導いておられます」

撮影=山名敏郎

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