〝思いを超えて働かれる主〟 教会閉鎖から2カ月 「死者最多」のイタリアで 内村伸之(ミラノ賛美教会牧師) 2020年5月11日
欧州でもいち早く国土全体が封鎖されたイタリアでは、5月にようやく50日間にわたる厳しい隔離期間を終え、多くの企業や工場が再開され始めた。しかし、なおも残る感染拡大への不安と外出規制により、生活は一変した。ミラノの中心にほど近いミラノ賛美教会で2003年から日本人宣教師として牧会に従事する内村伸之、まり子夫妻は、同教会が発行する会報「ミラノの風」4月号で、教会が閉鎖される前後の様子を克明につづった。その一部を紹介する。
内村伸之(ミラノ賛美教会牧師)
本稿執筆現在(2020年3月28日)、イタリアのコロナウイルス感染の合同者数は10万人に近づき中国を超えました。死者は1万人に達し、世界最悪を記録しています。そして3月27日に報告された死者の数は969人となり、一つの国で1日に確認された死者数としては、世界最多を記録しました。実に1.5分に1人の割合で新型コロナウイルスによりイタリア国民が命を落としています。牧師館に面した道路には今もサイレンを鳴らした救急車がひっきりなしに往来しています。イタリアに、事実上の外出禁止令が出された、この1カ月の状況を振り返りながらお伝えしつつ、そのような危機の時代に私たちの教会ができること、祈祷課題などを時系列に記します。
この1カ月のイタリアの変化
■2月28日 (金) 最後の晩餐
今振り返ってみると私たち夫婦にとってはこの日が最後の外食をした日となりました。ミラノ賛美教会の執事ご夫妻からお招きを頂き、レストランで会食をしたのです。この時はまだ店内にも多くの家族連れの客がいて、週末のミラノは華やいでいました。その席で牧師夫婦である私たちと、執事ご夫妻で「ミラノ賛美教会ではどのように礼拝の中でウイルス対策をしていくべきか」ということを話し合いました。その席でレストランの店主から「明日以降、政府からの通達でレストランは営業ができなくなった」と聞きました。
■3月1日(日) 教会の閉鎖
前日に、私たちが礼拝を会堂で通常通り行うかどうかを検討していたその夜、行政により教会堂での礼拝が禁止されました。これは、ミラノ賛美教会設立以来はじめてのことでした。
この日は、各自の家で主の前に静まり、各家庭で礼拝を捧げることにしました。通常であれば会堂で会衆礼拝が始まる時刻に、教会のメンバーに御言葉と祈り、そしてメッセージをメールで配信をしました。その週から、「イタリア全土の学校閉鎖」「隣の県までに移動禁止の通達」など段階的に行動制限が発令されていくようになりました。
■3月8日(日) はじめてのオンライン礼拝
この日曜日からミラノ賛美教会メンバーを対象に、オンラインで神の前に集い共に礼拝を捧げることにしました。初めてZoomというオンラインミーティングに特化したアプリを用い、御言葉を開き、説教後には御言葉への応答と近況を分かち合い、祈り合う時をもちました。この週から行動制限は、食品調達や医療機関へ行く場合を除いて外出が禁止と、さらに厳しくなりました。
■3月15日(日)イタリア・オランダ・スペイン・ポルトガル・フランスとの合同礼拝
この頃になると、イタリアのみならず欧州全土に新型コロナウイルスの感染拡大が拡がり、そのスピードを増していきました。私が顧問牧師として巡回予定だったオランダやスペインへのフライトもキャンセルされ、そして欧州各地の教会も閉鎖されていきました。そこで、今は地域教会の力を合わせて、共に礼拝を捧げることに決めました。
そのことを決めると、日頃から牧師のいないポルトガルやフランス・ストラスブール、デンマークの集会などからも信徒が集い、私たちのアイデアにはなかった初めての合同礼拝が始まりました。そして今、週を追うごとに、これまで教会には足を運ばなかった求道者の方も加えられるようになり、オンラインでの礼拝が祝福されていきました。
私たちの思いを超えて働かれる主を皆で崇め、「あなたがたは心を騒がしてはなりません」というイエス・キリストの言葉に私たちは励ましを受けています。
(うちむら・のぶゆき)