カトリック正平協がシンポ オンラインで「戦後75年と憲法」 2020年10月11日
日本カトリック正義と平和協議会は9月19日、Zoomを介したオンラインシンポジウム「戦後75年と憲法」を開催した。松浦悟郎(カトリック名古屋教区司教)、中野晃一(上智大学教授)、安田菜津紀(フォトジャーナリスト)の3氏による発題に、約100人の参加者が耳を傾けた。
松浦氏は「日本のカトリック教会の戦後と憲法問題」と題し、教皇パウロ6世の呼び掛けに応えて正義と平和協議会(当時は正義と平和委員会)が発足してから、憲法と平和をめぐるさまざまな課題に取り組んできた経緯を紹介した。
中野氏は「日本の戦後75年、これからの日本のゆくえ」と題し、改憲をめぐる議論の変遷をたどった。「時代に合わなくなった」「理想論に過ぎない」とする改憲論について同氏は、「そもそも憲法は前文にあるように『崇高な理想と目的を達成することを誓う』ものであり、戦後の公布当初から現実をなぞっていたわけではない」と反論。「護憲」対「改憲」という構図から、明文改憲を棚上げにして実質的な「壊憲(かいけん)」を目指す「立憲」対「非立憲」という構図にシフトしてきた歴史を振り返り、コロナ禍で露呈した格差、差別、排外主義を煽る分断と支配への対抗運動として、「#MeToo」やBLM運動など、他者性と隣人性に基づく連帯と共生の重要性を強調した。
「戦後75年目の国際社会をジャーナリストの眼から見る」と題して発言した安田氏は、上智大学在学中に訪れた中東での体験を撮影した写真と共に紹介。クルド人自治区に「広島通り」と名付けられた道路があること、「日本のような平和を築きたい」と願う声があることに触れ、「彼らに誇れるような平和を私たちの手で築けてきただろうか」と複雑な心境を吐露した。
シリアで戦争が始まった2011年には、東日本大震災により義父母が被災した陸前高田市で、避難生活を続ける被災者との出会いから「恩送り」が連鎖することの大切さを学んだという。「戦後75年、確かに国内で戦火が広がるようなことはなかったが、この国は憲法9条を持ちながら間接的に他国の戦争に加担してきたのではないか」と問いかけた。
シンポジウムの模様はYouTubeで視聴できる。