WCRP 人身取引防止を訴える声明を発表 2021年8月11日
国連が定める「人身取引反対世界デー」(7月30日)に先立ち、世界宗教者平和会議(WCRP / RfP=Religions for Peace)日本委員会(植松誠理事長)は7月27日、記者会見し、人身取引防止を訴える声明を発表した。人身取引が、多くの人々が関わる喫緊の人道問題との認識にたち、政府や企業、そして広く日本社会に対し、この問題の根絶に向けた早急の行動を呼びかけた。
声明では、人身取引を、性的搾取、強制労働、臓器売買などの目的で、脅迫、誘拐、騙し、または悪質な利益誘導のもと、売買し、支配するものとし、日本で「現代奴隷」として暮らしている人の数は、推計で37,000人いると指摘。WCRP / RfPでは、昨年、同委人身取引防止TFを立ち上げ、国内外の人身取引の実態を学んできた。その学びを経て、今回声明文を作成し、政府、企業、そして広く日本社会に対して、人身取引の全面的防止、被害者の救出、被害者の尊厳の回復、被害者の社会への再統合、加害者への対策強化という法的措置も含めた基本的な対応の徹底的な実施を求めるとした。
WCRP日本委員会は、創設以来、世界、国、地域社会で生きるすべての人々の平和のために活動してきた。これらの活動をもとに、人身取引による被害者の防止に向けた行動として、①WCRP日本委員会加盟教団ならびにWCRP国際ネットワークに対する意識啓発活動、②人身取引被害の社会的認知向上のためのアドボカシー活動、③ WCRPと政府機関、国際機関、人権擁護に関わるNGOや市民団体等との連帯、④ WCRPの社会的資源を活かした犠牲者に対する精神的・物的支援───の4点をあげた。
会見者あいさつの中で、ACRP事務総長の根本氏は、人身取引問題の根底には貧困問題があるこを指摘し、神仏から与えらた命の尊さを伝えていきたいと話した。また、当事者に目を向けて取り組むことが宗教者の役割であり、自分個人でできること、WCRPとしてできること、この二つの面から考えていきたいと語った。
シスターの弘田氏=写真上=は、日本の人権意識の希薄さに言及したうえで、「人権取引はあってはならないことで、許されることではない」と力を込める。また、コロナ禍の中で、メディアをとおして性的搾取が増加している現状を伝えた。そのうえで、この問題が、送り側政府と受け入れ側政府、さらにその間にある仲介組織といったグローバルな広がりを持っているとし、問題解決には、政府と民間の緊密な協力が不可欠だと話す。さらに、日本国内で起きている人権侵害に対して、海外から厳しい目が注がれている今こそ、人身取引の問題について政府は海外からの批判を真摯に受け止めるべきだと述べ、人身取引の問題について政府が真剣に取り組み、行動を起こすことを要請した。
カトリック信徒の小宮山氏は、いくら国連が定める労働規約にサインしても、現状の劣悪な慣行を改善しない限り変わっていかないと話し、国際的な人権を守る労働計画に合致するよう日本の今の慣行を変えてもらいたいと訴えた。また、技能実習生を受け入れるプロセスが煩雑すぎることにも言及し、仲介組織の不正、母国で背負わされる多額の負担金などの改善を求めた。教皇フランシスコの言葉「人間をモノのように扱ってはならない」を引用し、「共に生き、共に働き、生活する喜びを共に分かち合う。そういうことができるのが真のグローバル社会ではないか」と締めくくった。(ライター 坂本直子)