ロシア 同性愛の修道女を描く映画、公開禁止措置へ 2021年9月21日
ロシア文化省は9月17日、17世紀の同性愛の修道女を描く映画『ベネデッタ』(ポール・ヴァーホーヴェン監督・仏独製作)について、上映禁止措置を決定したと発表。カンヌ映画祭・最優秀賞ノミネート作品でロシア語訳タイトルは『誘惑』、公開を10月7日に控えていた。
モスクワ総主教庁は「作品内の複数の場面について、本質的にポルノグラフィであると言わざるを得ず、ロシアにおいてポルノ配布は禁止されている」とコメント。またLGBTへの強硬な発言で知られるサンクトペテルブルク市・議員ヴィタリーミロノフ氏は「冒涜的だ、人々が神聖さへ敬意を持つロシアでは許されない」とした。ミロノフ氏は、2013年には、ソチ五輪において選手が同性愛を未成年者にアピールした場合、逮捕もあり得ると発言し物議をかもした。
なお同作品は、実在の人物に関する歴史研究をエンターテイメントとして脚色したもの。J・C・ブラウン著『ルネサンス修道女物語―聖と性のミクロストリア』(原著1986年/邦訳1988年、ミネルヴァ書房)は、宗教改革時代のイタリアを生きた修道女ベネデッタ・カルリーニの生涯を、メディチ家「雑録」に挟まれていた裁判記録から再現したもの。「歴史」から発掘された「聖書と性」の事例として、世界各国で史学者らによって翻訳され、話題を呼んだ。修道女ベネデッタは、預言と幻視、同性愛疑惑で知られ、現在、中世キリスト教世界における同性愛の実例として考えられている。
日本公開は未定。7月よりフランス、香港、ベルギーなどの国際映画祭で上映され、10月よりスペイン、ウクライナ、オランダに始まり、順次ドイツ、米国、英国などで公開予定。ロシアでは非公開となった。