【東アジアのリアル】 コロナ禍のマレーシア教会と林萬興牧師の証 葉 先秦 2021年10月1日
新型コロナウイルス感染症は2019年12月に武漢で確認されて以降、世界中に重大な影響を与えてきた。一体いつまで続くだろうかという不安と疑問が人々の心にあることだろう。
マレーシアは、一部の地域で感染者数が引き続き高い数字を維持し、感染拡大防止のための行動制限措置が実施されても、全国は1日平均1万7970人の新規感染者が報告されている。そして、移動制限や封鎖などの措置に伴い、社会経済活動の危機が明らかになった。
そうした中、最近、市民の間で「白い旗運動」が広がっている。それは、感染症のために働くことができず生活に困窮する人たちが、支援を求める合図の印として白い旗を自分の家の外に掲げるという運動である。これに呼応して、マレーシアの各教会・教団、組織などの教会諸団体は何度も感染症のために祈祷会を行ってきたことに加え、具体的な支援を実施することも始めた。
例えば、非営利団体「CREST(Crisis Relief Services and Training Bhd)」というキリスト教組織は、酸素濃縮器を複数の病院に贈ったり、隔離のためのホテルを借り上げて感染者が10日間無料で食事付き宿泊ができるようにしたりしている。「全人関懐協会」も、各教会の地域コミュニティに対し、「安全な隔離専用部屋」を設立して自宅隔離が適切ではない人を泊めようと呼びかける。こうした対策により、彼らは感染の連鎖を断ち切り、医療機関への負荷を減らそうとしている。それに加え、他の教会やキリスト教の組織もさまざまな対策を通して、感染症拡大を防止する運動に参加しているが、こうした活動には地元の人のみならず、難民と移民の人々も参加している。
私のマレーシアにいるクリスチャンの友人の中にも、何人か感染しただけでなく、亡くなった人もいる。
伝道師や牧師の中で感染した人たちもいるが、私が属しているアッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団のマレーシアの教会では、林萬興(リン・ワンシン)牧師(アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団/神召会)が新型コロナに感染しながらも癒やされたという証しがよく知られている。彼は元々ギャンブルの常習者だったが、クリスチャンになり、牧師になってからは「信仰戒賭会」を創立し、ギャンブル依存症の人を支援する活動も行ってきた。
今年7月8日、彼は不幸にも陽性判定を受け、間もなく血中酸素濃度が急激に下がり、後に呼吸困難に陥った。その後入院したものの、その病院はほとんど満員で、医療資源と酸素投与が不足しており、「病院では毎日、周りの患者たちが次々に死んでいった」と後に振り返っている。入院中、彼の妻(彼女とその娘も感染したが軽症)は「24時間/7日間祈祷」を人々に呼びかけ、その後、林師は奇跡的に転院できると知られた。転院後、より良い治療が受けられ、彼は次第に回復し、約1カ月後には完治したと報告された。退院直前、医療報告書を見て、初めて自分が一時重体に陥っていたことが分かったという。
入院中、林氏は「私は一体何者なのか? ギャンブラーだったこのような私が、なぜ大きな恵みを受けられたのか?」と考え始めた。彼が感染したことにより、世界中の教会、組織、兄弟姉妹が彼のために祈るようになり、ある姉妹は彼の妻と共に、足が腫れるほどまでにひざまずいて祈ったという。また、別の姉妹は、自分の夫が人のために涙を流すほどまで祈るのを見たことがないと語った。今回の病気を通して、林氏は自分の奉仕と人生を新たに反省した。
かつて彼は「戒賭会」で多くの人を助け、自分は神様の忠実な僕なのだから、将来自分の葬儀には必ずたくさんの人が彼を記念するために来るだろうなどと、傲慢にも考えていた。しかし感染症にかかったことにより、主からの報いの方が人からの称賛よりも大切であり、最大の幸福だと気が付いた。林氏は現在、すでに教会の奉仕に戻り、主の救いと恵みを証ししている。
コロナ禍の影響を受けているクリスチャンや伝道者が多くいるこの国のために、祈ってほしい。
葉 先秦 Iap-Sian Chin 1981年生まれ、台湾新北市出身。中原大学(台湾・桃園市)修士課程で、ペンテコステ派の神学と歴史の研究。政治大学博士課程で真耶?教会をテーマに博士号。現在、政治大学華人文化主体性研究所特任研究員。