支援長期化、さらなる協働を 聖イグナチオ教会で「年越し大人食堂」 2022年1月11日
コロナ禍で迎えた2度目の年末年始、生活に困窮する人を支援する「年越し大人(おとな)食堂2022」が、聖イグナチオ教会(東京都千代田区)を会場に開催された。弁当や赤ちゃんおむつ・生理用品などを配布したほか、暮らしや医療の相談にも応じた。
12月30日と1月3日に開催された「大人食堂」。反貧困ネットワーク 新型コロナ災害緊急アクション、聖イグナチオ教会福祉関連グループ、つくろい東京ファンド、認定NPO法人ビッグイシュー基金などが協働で取り組んでいるもので、昨年5月のゴールデンウィークに引き続き今回で3回目となる。
稲葉剛さん〝個別での活動には限界〟
1日目には、278個の弁当が配られた。2日目は400個の弁当が用意されたが、開始11時半から40分ほどで200個の弁当があっという間になくなった。この日は開始1時間前から並ぶ人の姿もあり、午後になっても来場者は途切れることはなかった。終了時間までに407人が訪れ、弁当の数も急遽増やして対応した。
訪れたのは、幅広い年齢層の老若男女で、中には背広を着たサラリーマン風の男性や、子どもを連れた人の姿もあった。教会の入り口の前にある土手の上には、ちょっとしたテラスも設けられ、用意されたストーブで暖を取りながら、黙々と弁当を食べる人、ホッとした表情で語り合う人たちの姿が見受けられた。
「大人食堂」では、弁当を配るだけでなく、「生活」「医療」「女性」の分野に分けての相談所も設けられ、弁当を受け取った一人ひとりにボランティアが、困ったことを相談できることや、必要ならば市販の薬も提供できることを伝えていた。1日目には約100人(延べ人数)が相談に訪れたという。相談員として参加した精神科医の香山リカさんは、深刻な健康や医療の相談をしても、紹介状やわずかな市販薬しかもらえず、何度も頭を下げ、寒い「住まい」に戻って寝る相談者に対し、自分は相談を受けても医療行為はできないのに、何度もお礼を言われ、暖かい家に帰りシャワーを浴びて寝るという「非対称性」への葛藤をフェイスブックに綴っている。
「大人食堂」は、支援団体が連携して開催し、食材も北海道、群馬、長野、東京など各地の農家から寄せられている。つくろい東京ファンド代表理事の稲葉剛さんは、コロナ禍が20カ月以上も続き、生活困窮者の現場が依然厳しくなる中では、個別での活動には限界があり、「大人食堂」のようにそれぞれの団体が連携して支援にあたる必要性を語った。
毎回「大人食堂」に場所を提供する聖イグナチオ教会は、つくろい東京ファンドの活動の一つである「せかいビバーグ」にも協力している。これは、たった今住まいを失っている、ネットカフェなどでくらしていたが、お金がなくなり、今夜は安心した場所に泊まることができない……。そんな事態に陥った人たちのための支援スキーム。その1日をしのぐことができる「緊急お助けパック」を渡す受け取りスポットにさまざまな市民の人になってもらい、簡単な受付で受け取り、翌日支援へつなげるものだ。同教会は、この受け取りスポットになっていて、他にもお寺や、法律事務所、カフェ、深夜営業の薬局などが登録している。現在、その輪を広げているところだ。問い合わせは、つくろい東京ファンド(Tel 03-5942-8086、Eメール=info@tsukuroi.tokyo)まで。