【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】 お勧めの入門書は? 白井幸子
Q.新しく教会に来られた方にふさわしい入門書がありません。何かお勧めはありますか。(50代・女性)
新しい方にお勧めするというよりは、わたし自身が大きな恵みを与えられた信仰の本を挙げたいと思います。①内村鑑三『余はいかにしてキリスト信徒となりしか』、②パスカル『パンセ』。
①は、幕末に生まれ、クラークを通して解禁されたばかりのキリスト教の神と出会った青年が、どのようにしてキリスト教徒となるに至ったかを記した本です。
②は、若くして物理学、化学、数学の分野で世界的な業績を挙げたパスカルが、やがてすべての学問を捨てて、神の真実と恵みを伝える本を書く決意をし、道半ばにして天に召された後に残された思索のメモです。
両書ともすでに古典となったかなり古い時代の本ですが、キリストの父なる神が、どのように苦しみにある人に働きかけ、信仰の恵みに導かれるかをリアルに記してあり、時代を越えて現代人に迫るものがあります。
考えてみれば、聖書、ことに四つの福音書は充分にやさしく書かれています。
「心の貧しい人々は、幸いである/天の国はその人たちのものである」(マタイによる福音書5章3節)、「私は復活であり、命である。私を信じる者は、死んでも生きる」(ヨハネによる福音書11章25節)。
このようなイエスの言葉は、だれが読んでも理解できる言葉ではないでしょうか。
そこで福音書そのものを、三つ目の入門書としてお勧めしたいと思います。聖書は、読むに易しく、信じるに困難な書です。その困難を突破させてくださるのは、祈りに応え、人生を導いてくださる神その方です。
神によって造られた自然と人間が、神の愛と知恵によっていかに巧みに造られているかを知ることは、聖書を理解するためのもう一つのすぐれた入門書となるように思われます。
キリスト者は、日々新たに信仰を与えられ生きる者ですから、すべてのキリスト者は常に信仰の初心者であると言えるかもしれません。
新しい方に役立つ信仰の入門書ならば、それはすべての信仰者に恵みを与えてくれる書となるでありましょう。
*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。
しらい・さちこ 青山学院大学文学部を卒業後、フルブライト交換留学生として渡米。アンドヴァー・ニュートン神学校、エール大学神学部卒業。東京いのちの電話主事、国立療養所多磨全生園カウンセラー、東京医科大学付属病院でHIVカウンセリングに従事した後、ルーテル学院大学大学院教授を経て同大名誉教授。臨床心理士、米国UCC教会牧師。