世界教会協議会(WCC)やルーテル世界連盟(LWF)の加盟教会や関連団体などからなる、人道支援・開発支援・政策提言のためのエキュメニカルな国際的同盟である「ACT(アクト)アライアンス」は、エジプトのシナイ半島南部にある都市、シャルム・エル・シェイクで11月6日から期間を2日延長して20日まで開かれた国連の気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)に代表団を送るとともに、11月20日、COP27の成果について「最も脆弱な人々のための大きな打破とともにCOP27が終了」したと称賛する記事を公式サイトで発表した。
「気候によって引き起こされる損失と被害、適応が不十分であるかまたはもはや選択肢ではない状況が、世界中で増大する脅威となりつつあり、とりわけ脆弱な社会においてそうである」と、ACTアライアンスは同記事で述べる。「30年以上も前に、小島嶼諸国はこの問題を国連の気候会議の議題に持ち込もうとした。エジプトで開かれた国連の気候サミット、COP27の終わりに、私たちは締約国がこれらの損失と被害に取り組むために基金の創設と支援の動員に合意したことをついに祝うことができる」と、ACTアライアンス気候正義グループの共同議長であるマティアス・ソーデルベルグ氏は、「ACTアライアンスはこの政治的打破にとても喜んでいる。気候変動によって最も影響を受けている人たちは、もはや忘れられていると感じるべきではない。地球共同体は彼らのニーズを認めて行動することに合意したのだ」
「私たちはすべてのグローバル・サウス(南の発展途上国)の交渉者たちに加わって、損失と被害の機関についてのCOP27の約束を祝う」と、ACTアライアンス総幹事のルデルマール・ブエノ・デ・ファリア氏は言う。「これは彼らの決意に基づく、市民社会や信仰者の行為主体によって支援された、長年にわたる行動の成果だ」
ところが、ACTアライアンスは「このサミットで他にほめるべき成果はほとんどない」と厳しい評価も下した。「最前線にいる信仰者の行為主体として、私たちは神の創られた世界に対する不作為の影響が見える」と、ブエノ・デ・ファリア総幹事は言う。「私たちは、最も貧しく最も脆弱な人たち、気候変動を助長するのに最も何もしてこなかった人たちにますます影響を及ぼしつつある、気候変動の影響に取り組むために、緊急の行動が必要だということを知っている。COPの締約国は気候緊急事態の緊急性を理解していないか、または忘れているように見える」
緩和
「世界の国々によって現在発表されている緩和の行動が、地球の気温上昇を1.5度に保つのに十分なほど野心的なものからは程遠いことを示す報告に次ぐ報告が発表されてきている」と、ACTアライアンスは説明し、こう続けた。「ところが、これらの努力を加速させるためのCOP27での野心のレベルは増すどころか遅くなった。ACTはとりわけ全ての化石燃料の段階的廃止と再生可能エネルギー100%への明確な移行を求める明確な呼びかけがないことを残念に思う。シャルム・エル・シェイクで化石燃料のロビイストたちの存在感が極めて高かったことからすれば、それはあまり驚くべきことではない」
「先住民族の権利と人権が、炭素市場に関する新しい合意の中で脇に追いやられてしまったことは受け入れられない」と、ACTアライアンスのマリアンナ・レイテ博士は述べている。「同じように、国際法と科学における解決策を基礎づける必要性について行ったり来たりしているのは恐ろしい。私たちはウソの解決策から遠ざかり、交渉を妨げてはいわゆる循環型炭素経済といったような明らかに効果のない解決策を強く求めている締約国に非難する必要がある」
適応
「グラスゴーにおけるCOP26は、干ばつや嵐、そして変動する気候をより良く生き延びることができるようにするために、社会が(気候変動に)適応するのを助けるための資金的支援の増大のための道筋を定めた」と、ACTアライアンスは説明し、「適応資金を倍増させる提案は、自給自足の農家や漁民、そして他の多くの社会の緊急のニーズに取り組むのを助けるだろう」と付け加えた。
「適応資金を倍増させることに合意して1年後に、COP27でその約束を前進させることができないなんて、言い訳できない」と、カナダ福音ルーテル教会の青年代表であるカタ・クーネルトさんは言う。「気候変動の影響を受けている脆弱な国家や社会がより頻繁で極端な気象に適応するのを助けるための支援を待つことはできない」
ジェンダー、先住民族と人権
女性たちと少女たちのあらゆる多様な権利は、先住民族の権利や人権と共に、交渉において脇へ追いやられることが多かった。これらの権利は、気候資金・緩和と適応に関する合意文書の文言には事実上見えない。「交差的なジェンダーのレンズは付け足しではありえない」と、ACTアライアンスの中東・北アフリカ(MENA)ジェンダー実践共同体議長でCOP27代表団の一人であるマナル・シェハデさんは言う。「真実はというと、資金がなければ、ジェンダーの変革をもたらす気候の行動もないだろうし、ジェンダー正義がなければ気候正義もないだろうということだ」
「気候緊急事態のジェンダーに関する次元に取り組まない行動は不平等をさらに悪化させうる」と、ACTアライアンスは述べ、こう続けている。「COP27で、私たちはジェンダーを包含する政策が主流となるのを確かめる必要があった。代わりに、私たちは文言が薄められさらに遅れるのを目撃した。必要な関連する支援についての締約国同士の不一致のために、『ジェンダーに関するリマ作業計画』とその『ジェンダー行動計画』についての議論は、2023年のボンへと持ち越されると予想された。これは交渉の一時停止という結果をもたらし、そしてそれから終わりの数時間の間に、合意文書が無理やり通された」
資金
ACTアライアンスによると、「カナダとドイツによる報告書は、先進諸国が、2020年までに約束された年1000億米ドルよりもむしろ、年830億米ドルを何とか集めただけだったことを示した」という。「これまでの不足額の納入や向こう数年にその約束をいかに守るかについての明確な計画が確立されるだろうという期待が応えられることはなく、その義務に応えるようにというあいまいな呼びかけが残っただけであった。緩和・適応・損失と被害の活動に資金を出すために、どの国が資金を拠出すべきかについて合意するための締約国による努力は、歴史的な排出国や現在の排出量が増大しつつある中所得国が、拠出国の範疇に誰が含められるべきかをめぐって口論となり、不一致に至った」と、ACTアライアンスは伝えた。
「気候資金に向けて定期的に支払いを約束した拠出金がいくつかあったが、社会の決定的に重要なニーズに取り組むのに必要な規模ではなかったし、要請されている通りそれらが追加的で新規であるかは疑問の余地がある」と、ACTアライアンスは述べ、こう付け加えた。「加えて、気候資金については、適応や損失と被害の資金を含めて、ほとんど進歩がなかった。この資金なしでは、グローバル・サウスは気候緊急事態に適応できず、債務状況が悪化するだろう」
「COP27では、現状維持に対する本当の変革や、過去の過ちに対する説明責任がない、たくさんの政治的な見せかけがあった」と、ACTアライアンスの気候正義大使であるコルネリア・フュルクルク・ヴァイツェル教授は言う。「最終的に、現在の危機と闘うためにもし汚染国が新規で追加的な資金を約束しなければ―脆弱な国々のさらに債務の重荷を増やすことなく―、彼らの約束は空虚な言葉以外の何物でもなくなるだろうし、彼らは自らが原因を持っており引き起こし続けている被害を伴う国々を劇的に置き去りにするのである。これは、口先だけの賛成に関わらず、無責任であり、連帯が欠けている」
結論
ルーテル世界連盟の青年担当幹事であるサヴァンナ・サリヴァンさんは、「未来の世代のために安全な地球を確保するために、私たちにはすべての人々から気候正義のための大胆な決定が必要だ。私たちはそれらの議論に青年を参加させる必要がある。彼らは今の交渉や会話に重要な考えや視点をもたらすばかりでなく、彼らは今から40年後も(地球という「家」の)部屋の中にいる人たちなのだ。COP27で私たちが見た青年のリーダーシップと参加への投資は、私たちの地球の未来への投資なのだ」
「国際協力が遅れていることは、人々が自らの家や暮らし、そして自らの命さえも毎日失っている社会における行動が遅れることを意味する。これが続いてはいけない」と、ブエノ・デ・ファリア総幹事は結論付ける。「私たちは1.5度と、そこへたどり着くのに必要な深い排出量の削減から、そして気候正義が必ずこのCOPやすべてのCOPのすべての働きの中心にあるようにすることから、目を離さないようにしなければならない」。そして、等しく重要なこととして、ブエノ・デ・ファリア総幹事はこう付け加えた。「先進諸国は、新たに創設された損失と被害の資金のために、新規かつ追加的な資金を直ちに運用可能にし、したがって、動員する必要がある」
COP27 concludes with a big breakthrough for the most vulnerable
https://actalliance.org/act-news/cop27-concludes-with-a-big-breakthrough-for-the-most-vulnerable/
(エキュメニカル・ニュース・ジャパン)