WCC クリスマスを迎えるベツレヘム「すべてはコミュニティーのため」 2022年12月13日

世界中のキリスト教徒がアドベントの季節を迎える中、すべての始まりの地・ベツレヘムでは、すべてのキリスト教の伝統の中心にあるその一つの物語を祝うための準備が本格化している。世界教会協議会(WCC)のサイトから、アルビン・ヒラート氏のフォトエッセイを紹介する。
クリスマスがいかに心躍るものであっても、パレスチナの人々の現実は占領下にある。
パレスチナのベツレヘム郡ベイトサホールに妻のルブナさんと3人の娘という家族で暮らすサリーム・アンフースさんは、「パレスチナ人として、私たちは信じられないほど豊かな歴史、文化、遺産を持っている」と言う。
「しかし、そのような遺産があっても、私たちは占領下で生活しており、パレスチナ人としてのアイデンティティに影響を与えることは避けられない」と彼は言う。
家族で祝うクリスマス
サリームさんと妻のルブナさんは、クリスマスが近づくと、家族、そしてベツレヘム周辺のコミュニティにとって、1年のうちで最も重要なイベントであることを喜ぶ。
「子どもを持つ親として、クリスマスが近づくとわくわくする。音楽が流れ、バザーやフェスティバルが開催され、スター・ストリートはクリスマス・マーケットに変わり、私たちはそのすべてに行く」サリームさんは言う。「私たちがクリスマスツリーを設置し、娘たちは飾りつけを手伝ってくれるのだが、その下にある箱を見ると、ちょっと凄いことになるのだ」
一家の長女、8歳のセリアちゃんは、すでにクリスマスのベテランだ。3歳のときには、ベツレヘムのさまざまな場所でクリスマスの物語を朗読する家族のビデオに出演し、毎年、サンタに手紙を書いてクリスマスの願いごとを宣言する役を買って出ている。今年は、化粧をするためのテーブルがその筆頭に挙げられている。
セリアちゃんのお母さんのルブナさんは、クリスマスの思い出が家族で共有できることについて、次のように語っている。「クリスマスの朝、目を覚ました娘たちが、夜中にサンタさんが来てくれたと思うときの彼女たちの顔に映る目を見るって、どんなに素晴らしいか」と笑顔で語る。
それだけでなく、サリームさんとルブナさんは、ベツレヘムにはクリスマスを一緒に祝う大きなコミュニティがあること、12月初旬に聖母教会の外にあるクリスマスツリーのてっぺんの星に火をつけると、マンガー広場全体がパレスチナ人でいっぱいになること、またパレスチナ人が伝統を超えて一緒に喜んでくれることも話してくれた。
「ベツレヘムでは、クリスマスを一度だけでなく、3度祝う」と夫妻は説明する。12月に西洋の伝統、1月に2度、異なる正教の伝統を祝うのだと。
「私たちの文化では、クリスマスはすべて共同体に関わることなのだ」とサリームさんは言う。
軍事占領の苦い味
一方、ヨルダン川西岸地区で続く軍事占領の影響は、クリスマスであっても見逃すことはできない。
ベツレヘムは、そうでなければ近接となるエルサレムから、空へ上るような8~9メートルの高さのコンクリートの壁で封鎖された町であり、その壁はその地を取り巻き、特別な横断の許可なしに誰もアクセスできないように立ち入り禁止になっている。
そして、クリスマス自体は過去にパレスチナ人がお祝いの一環としてエルサレムを訪問する「ホリデーシーズン」許可を得ることができたことを意味してきたが、2020年初頭にコロナ禍が到着して以来、このようなこと(通行が許可されること)は起こっていないとサリームさんは言う。
さらにその先には、パレスチナ難民を収容するために1950年に設立されたアイーダ難民キャンプがあり、何十年経っても解決されない紛争を思い起こさせるもう一つの場所となっている。
そして、占領下の生活は、パレスチナのキリスト教徒にとってもクリスマスの準備に影響を及ぼしているのが現実だ。
「私たちはクリスマスを祝うのが大好きだ」サリームさんは言う。「しかし過去には、クリスマスや他の祝日に、主要な政治的出来事といえることがあり、私たちはパレスチナ人として団結して立ち向かう必要があることを知っており、これはパレスチナでのお祝いはキャンセルまたは延期されてきたことを意味する。同じ国の他の人々が苦しんでいることを知りながら、どうしてお祝いができるだろうか?」
「だから、たとえクリスマスの準備をしていても、実際に祝えるかどうかはわからない」と彼は締めくくる。
(翻訳協力=中山信之)
写真=Albin Hillert/WCC