【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】 就いてはいけない職業ある? 山岡三治
Q.キリスト者が就いてはいけない職業はあるのでしょうか?(10代・女性)
宗教改革の時代、カトリック教会では聖職者は信徒よりも上位の職業(身分)とされていたのに対して、ルターをはじめとした改革者たちはこの世の職業は神からの呼びかけなので貴賤上下はないとし、そこでこそ神の働きを経験するのだとしました。
カトリック教会も今では聖俗の区別より先に、すべてまず神からの呼びかけを受けた平等の身分であることから出発しています。となると、まず問われるのはどの職業を選ぶかというよりも、むしろキリスト者としてどのように職業(呼びかけ)に忠実に応えて生きるかということになります。愛と忠実さで仕事をし、出会う人々に心からの奉仕をしているか、と日々問いながら、自分も成長していく道です。
とはいえ、どの職業に実際に就くのかは悩み多いことでしょう。それがわかれば一生懸命にその仕事にいそしむのにと考える人もいるでしょう。
近年は大学卒業して就職した人が3年以内に離職する人が3割以上いて、その多くは選んだ職業のミスマッチだと言われています。文部科学省はこのような状況に対応するために、どの大学もキャリア形成支援を組織的に行うことを必須としました。それは就職より前に「なぜ自分は働くのか(あるいは働かなくてはならないのか)」「人生とはいったい何か」を大学入学した時からじっくりと考えさせるための組織的取り組みです。小学校からの教育にも取り入れることを始めた学校もあります。今こそキリスト教の価値観・仕事観を証しする機会であると思います。
キリスト者として職業を考える際には、対象の企業や分野が遠い未来の人類のために考えているかどうか、たとえば環境、貧困、平和、教育の問題などについてまじめに考え、なんらかの形で取り組んでいるかどうかも目安になるでしょう。その目安をクリアしてこそ、働く人は常に自分の仕事が人類に奉仕していることを意識することができ、生き甲斐を持って自分も成長していけるのではないかと思います。
やまおか・さんじ 1948年東京生まれ。慶應義塾大学(経済)、東京教育大学(文学)、上智大学(神学·神学研究科)を経てグレゴリアーナ大学(ローマ)で神学博士。アメリカ、中国、イタリア、フランス、広島などでの宣教·司牧経験の後、上智大学神学部教授、学校法人上智学院総務担当理事を歴任。カトリック・イエズス会司祭。