聖書ラノベ新人賞 佳作受賞の都倉さんとオタクの心理と「布教」を考える 2023年6月10日
3月に結果が発表された第3回「聖書ラノベ新人賞」(キリスト新聞社・日本聖書協会共催)において、佳作を受賞した『川崎ホーリーブラザーフッド』の作者・都倉さんが、本紙のインタビューに答えた。
ライトノベルの募集にあたって「よく『何をしたら怒られますか』とキリスト教界隈の外から尋ねられるが、一部の信者を除いて何をしても怒られないし、そもそも神は人間の言動一つひとつを取り上げて怒るような存在ではない」という主催側の意図について、都倉さんも賛意を示し、「数の少ない空間だから目立ちやすく、許容する範囲の狭い人もいる。おそらく国民の半数ぐらいがクリスチャンなら、多様性の一つとして何も言われないのだろう」と日本におけるクリスチャン総数の少なさゆえに、出る杭が打たれやすい環境下にあることを指摘した。
都倉さんは高校生の時にキリスト教主義の学校に入学し、そこでキリスト教と出会った。当時、「牧師も神父も普通の人間」であり、「同じ人間が違う役割を果たしているにすぎない」ということに気がついた。今回、佳作を受賞した『川崎ホーリーブラザーフッド』でも、その点を意識して描いたという。
「受洗を目的とした活動は下心が見え見えで引かれる」との意見に対し、都倉さんは「何かを創作する時に、初めから伝道を意識しない方がいい。伝わるものは伝わるから、下心を持たないのがポイント」と述べた。また、自身もクラシック音楽オタクであるという都倉さんは、「楽曲の知識量の有無で、オタクとしての濃淡を測るのではなく、『好き』という気持ちを一番大事にしたい。周囲との温度差が興味を減退させることもある」と話した。
都倉さんの描く『川崎ホーリーブラザーフッド』も、あくまで「布教」を前提とするのではなく、著者の感じたキリスト教をありのままに表現した作品。その「ゆるさ」ゆえに魅力を感じ、実際に教会へも足を運ぶ読者が生まれることが期待される。