ドイツのボンで6月5日から15日まで開かれていた国連の気候変動会議(SB58)で、化石燃料を終わらせるための地球規模の呼びかけを始めようと、太平洋教会協議会(PCC)総幹事のジェームズ・ブハグワン牧師=写真=は15日、記者会見を行い、地球規模の行動が持つ緊急の必要性と、太平洋が置かれている危険な状況を強調した。PCCがフェイスブックで伝えた。
「まず、化石燃料不拡散条約を呼びかけている国家や政治指導者、都市、地方政府、科学者、学者、保健機関、ノーベル賞受賞者、宗教共同体や団体が増えつつあるのを認めることから始めたいと思います」とブハグワン総幹事は述べた。「何十年もの間、人々や社会は、石炭や石油、そしてガス産業が持つ危険性について、地球規模で警鐘を鳴らしてきました」
ブハグワン総幹事は、19年前の2004年、キリバスの首都タワラで、太平洋の教会指導者たちが「オシン・タアイ宣言」で、化石燃料の主要な生産者や消費者たちに対し、より炭素集中型でない経済への移行や、エネルギー利用の削減、そしてよりクリーンで再生可能なエネルギー源の開発を支持するための最初の呼びかけを行ったと述べた。
同宣言文によると、オシン・タアイとはキリバスの言葉で、希望の象徴である日の出を意味する言葉。同宣言文には、英語で「気候変動に関する太平洋の教会会議からの声明と勧告」という副題が付いている。
当時、この会議に日本から参加した元PCCリサーチインターンの雀部真理さんが、新教出版社の月刊誌『福音と世界』2004年7月号で、「キリバスの人々の生活にふれて――オシン・タアイ宣言と私たちの責任」との記事を著している。
「私が話しているこの時にも、グアムの人たちは台風マワールの後始末をしており、インドやパキスタンの人々はサイクロン『ビパルジョイ』に備えていますが、それは上陸する沿岸に2~3メートルの高潮をもたらすと予想されています」と、ブハグワン総幹事は注意を促した。
「世界中で、人々は化石燃料産業に対して反撃しています。私たちは全ての化石燃料からの急速で公正かつ公平な段階的廃絶を強く求めており、そして私たちは大きな石油・石炭及びガス会社が責任を負って自らが引き起こす害について支払うよう要求しています」と、ブハグワン総幹事は続けた。
「UNFCCC(国連気候変動枠組み条約)はこの地球とその人々が緊急に必要としていることを未だに果たし損ねています。だからこそ、本当の進歩を達成するための気候に関するリーダーシップがこの会議場の外ですでに台頭しつつあるのです」と、ブハグワン総幹事は付け加えた。
ブハグワン総幹事によると、気候危機に対する責任が最も小さい、太平洋諸国のような回復力のある国々が、この危機からの唯一の具体的な抜け道としての化石燃料条約のための、交渉の権限を正式に求めている、推進派の国々からなるブロックの先頭に立っているという。
気候変動の影響を軽減するための活動がゆっくりとはいえ現在進行中である一方で、「私たちはこの気候危機がもつ根本原因に取り組む意味ある動きが欠けているのを無視できません」とブハグワン総幹事は述べた。
「これは気候変動と共存するということではなく、これは気候変動によって引き起こされる生態系と人道上の危機を止めるということなのです」と、ブハグワン総幹事は付け加えた。
「この気候危機の最大の原因は化石燃料なのです」とブハグワン総幹事は指摘した。「気候危機の責任は石炭、石油とガスの産業にあり、それらは人々や地球の生命の網に危害を及ぼす、略奪的で破壊的な経済システムを推進しては、気候の崩壊の火に油を注いでいるのです」
「化石燃料は気候や生態系、私たちの民衆。私たちの健康、私たちの民主主義、そして私たちの経済にとって悪いものなのです」とブハグワン総幹事は主張した。「太平洋の指導者たちはすでに気候変動がこの地域で唯一、安全保障上の最大の脅威であるとしているのです」
「科学は明確です。つまり、世界には、化石燃料から効率的で公平かつ公正なエネルギーや経済システムへの、急速で公正な移行が必要だということです。クリーンなエネルギー源に基づき、自然に対する畏敬の念と先住民族がもつ主権者の権利をもって生産されるシステムです」と、ブハグワン総幹事は説明した。
ブハグワン総幹事は、「今年9月、世界の指導者たちがニューヨークの国連に集まる時、世界中の何百万人もの人たちが、化石燃料の急速で公正かつ公平な終わりを要求するために街へ繰り出します」と述べ、同月17日に環境保護団体などの連合体「民衆 対 化石燃料」が計画しているデモ行進に言及し、次のように訴えた。
「最大の汚染をしている国々の指導者たちに対し、素早くて公正な化石燃料の段階的廃絶を実施しそれに資金を地球規模で提供するよう求めます」
さらに、ブハグワン総幹事は、太平洋の人口の80%をなす信仰共同体の代表者として、各国政府に対し、宗教指導者たちからの次の呼びかけを改めて述べた。
「化石燃料不拡散条約を発展させ実施するための交渉を緊急に開始し、拘束力ある地球規模の計画を策定すること。それは『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)』や国連環境計画によってその概略が示された最善の利用可能な科学に沿って、いかなる新たな石炭・石油あるいはガスの生産の拡大をも終わらせるため。
化石燃料に対する各国の依存やそれらが移行する能力を考慮に入れつつ、公正かつ公平な形で化石燃料の既存の生産を段階的に廃絶するため。
再生可能エネルギーの100%の利用への地球規模で公正な移行を地球規模で確実にし、化石燃料に依存する経済諸国がそれから多様化していくのを支援し、そしてグローバル・サウスはもちろんのこと全ての人々や社会が栄えることができるようにするため」
この記者会見での演説の最後に、ブハグワン総幹事は、「私たちは自らが現在持っている自己中心的な態度を犠牲にしなければなりません」と発言。「私たちは今こそ、正しく公正なことを行う意志と、より大きな善のために直近の利得を慎む先見の明、そして私たちが受け継いだよりもっと良い世界を私たちの子どもたちに継承できる希望を、自らの中に見つけ保たなければなりません」と述べた上で、こう結んだ。
「世界には化石燃料不拡散条約が必要なのであり、そしてそれが必要なのは今なのです」
(エキュメニカル・ニュース・ジャパン)