オンライン礼拝がもたらしたもの 関西でも『コロナ後の教会の可能性』出版記念シンポジウム 2023年6月28日

 日本クリスチャン・アカデミーとキリスト新聞社の共催による『コロナ後の教会の可能性』出版記念シンポジウム「危機下で問い直す教会・礼拝・宣教 in 関西」が5月26日、関西学院大学大阪梅田キャンパス(大阪市北区)で開催され、対面とオンラインを合わせて約50人が参加した。5月5日に都内で開催されたシンポジウムとあわせて企画されたもので、今回は同書の編著者から中道基夫(関西学院院長)、仲程愛美(日本基督教団石橋教会牧師)、吉岡恵生(日本基督教団高槻日吉台教会牧師)の各氏に加え、前回に引き続き越川弘英氏(同志社大学キリスト教センター教員)が登壇。司会は本紙の松谷信司が務めた。

日本クリスチャン・アカデミー 教派超え課題と可能性を模索 危機下で問い直す教会・礼拝・宣教 『コロナ後の教会の可能性』出版記念シンポジウム 2023年5月21日

 コロナ禍のただ中にあった2020年秋。状況が刻々と変わりゆく中、日本クリスチャン・アカデミー関東活動センター運営委員会の席での議論から共同研究プロジェクトが発足。各教会での実践を踏まえつつ、エキュメニカルな次元で取り組むべく、若手を中心に各教派から研究員が集められ、2021年4月から計7回の研究会が行われた。『コロナ後の教会の可能性』は、その発題内容と実態調査の結果をまとめたもの。

 冒頭で吉岡氏は、礼拝のオンライン配信により「これまで教会に集まることができなかった人々の存在が明らかになった。なぜもっと早く気づけなかったのか」と自らに問われた課題を投げかけた。

 オンライン礼拝の位置づけをめぐっては各教団・教派でさまざまな議論がなされたが、その中心は「本当の礼拝か否か」という点に絞られてきた。これについて中道氏は、「そもそも礼拝とは終点ではなく、神の国の仮の姿。それを踏まえてオンライン礼拝の議論がリアルかバーチャルかという点に留まっていることがそもそも問題」とし、「礼拝を通して神の国を指し示すという点が欠けていないか」と問いかけた。

 オンライン礼拝の普及で問われたことは、特に教職者を中心に「どのような牧会が可能か」という点だった。非対面の教会教育や交わりはキリスト教会の歴史上、世界規模では存在しなかった。仲程氏は、「コロナ禍で教会は、自分たちのことしか考えてこなかったのではないか」と振り返り、「社会に対して、まず何ができるのかという点を、信徒と考えられる教会が必要」と述べ、教会の内向きな志向を打破する必要性について語った。さらに、それは一教会で実現可能なものではなく、各教会の横のつながりによって成されるものではないかと提起した。

 中道氏は、以前から議論されていたがコロナ禍を通してより浮き彫りになったのが「牧会が個人ではなく教会というシステムの中で構築されることの大切」であると指摘。牧師と信徒の相談やカウンセリングよりも、どのような礼拝をささげるかが重要であり、そこでこそ「癒し」や「慰め」が求められるべきで、それらについて考察するのが牧会ではないかと述べた。

 その点において中道氏は、オンライン礼拝を一つの牧会の形として評価。また教会の保守的態度についても言及し、コロナ禍で人々が不安の只中にいる時「確実に教会へ足を運ぼうとした人が増えた」と述べる一方、それに比例するかのように教会は礼拝を「休止」することを選択した。確かにそれらは命を守ることやクラスターの発生を防止するための苦肉の策であったが、コロナ禍の終息が見えそうな今、教会は再び保守化するのではなく、社会に生きる一人ひとりのために礼拝の場を整える必要があると論じた。

 越川氏は、「テクノロジーの登場はキリスト教信仰にも変化を与える」と述べ、オンライン配信によって礼拝への敷居が低くなったことから生まれた「毎週、教会へ行かなくてもいいという〝ゆるい信仰〟」は、「命がけで礼拝を守る」という旧来の信仰観や礼拝論、教会形成にも影響を及ぼす大きな課題だと指摘した。

 また、日本の教会が明治期以降、あまり大きくならなかった理由について、「キリスト教徒の努力不足ではなく、意識的に大きくなろうとしてこなかった」との見解を述べ、「交わり(内的集団)を大切にする反面、それを越える集団形成を求めていないのが本音ではないか」と分析した。

 質疑応答では、コロナ禍を経てそれぞれの教会が直面する課題などについて意見が交わされ、多くの教会で対面礼拝が再開される中、「緊急事態下での応急措置」として浸透したオンライン礼拝も次の段階に移行しつつあることが共有された。

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