「聖地のこどもを支える会」20周年 紛争地の若者と平和模索 「平和の架け橋プロジェクト」4年ぶりに再開 2023年7月1日
「一粒でも多く」種まき続けて
被爆60周年にあたる2005年、初めて広島、長崎、東京で実施して以来、今年で13回目となる「平和の架け橋プロジェクト」が、コロナ禍を経て4年ぶりに再開される。長く対立するイスラエル、パレスチナから若者を招き、日本の学生とともに2週間の共同生活を通して「平和的共存」の可能性を模索し、異文化に触れながら相互理解と相互受容の大切さを体感するという試み。2011年以降は、東日本大震災の被災地でボランティア活動にも参加してきた。
主催するのは、今年20周年を迎えるNPO法人「聖地のこどもを支える会」(井上弘子理事長)。2003年、同法人の招聘で来日したイブラヒム・ファルタス神父(フランシスコ会)が広島を訪れ、この「破壊と再生の町」でこそ「平和の学び」を実現させたいと切望したことがプロジェクト立ち上げの契機となった。
イスラエル建国から75年、双方が歴史的に和解した「オスロ合意」から30年。いまだ暴力の応酬が絶えず、紛争解決の糸口は見出せていない。イスラエル軍による空爆や、断続的な軍事衝突が起こる中、両国間の若者が対立を超え、現地で交流する機会はまずない。
「平和の架け橋プロジェクト」は、そんな出会うことのない参加者同士が互いに平等な人間として受け入れ合い、「平和のメッセンジャー」であることを自覚し、国際的視野を持ったアクティブな平和構築のリーダーとして成長することを目標に掲げる。
この間、スタディツアーを含め3カ国から延べ200人以上の若者が参加。その後、国連などの国際機関、人道支援団体、外交官や新聞記者として実践的な平和構築の仕事に従事する参加者も少なくないという。
現地スタッフとしてスタディツアーのコーディネーターを務めるヤクーブ・ガザウィさん=写真上=もその1人。エルサレム出身のガザウィさんは15歳でこのプロジェクトに参加し、初来日。その後も、東日本大震災のボランティアなど、イスラエル・パレスチナの若者たちを取りまとめるリーダー的役割を担い、同法人ではプロジェクトの運営や日本人の若者による現地研修の実施を支えてきた。
本職は聖地特別管区(フランシスコ会)の首席オルガニスト。受胎告知教会(ナザレ)、聖誕教会(ベツレヘム)、聖墳墓協会(エルサレム)など、聖地の主要なカトリック教会でパイプオルガン奏者として活躍する。今年もプロジェクトが始まる8月より一足先に来日し、支援を呼び掛けるため東京、横浜、京都、奈良で、チャリティコンサートを行う。
2005年の初回から高校生として参加し、今も公私にわたってイスラエル・パレスチナと関わり続けているという石黒朝香さんは、「同じ時代に生まれながら、これほど異なる経験をしていることに衝撃を受けた」と振り返る。「プロジェクト参加者の多くは、平和を望んでいる一方で、相手方の紛争の話を真に聞くチャンスがなかった若者ばかり。将来を担う世代が、自らの考える和平のあり方を模索することが重要」と、紛争下に生きる若者への支援を呼び掛けている。
今年のプロジェクトは8月9日から2週間、広島、長野、東京を訪ねる予定。2016年から長野県の善光寺で参加者を受け入れ、日本文化に触れる機会を提供してきた住職の福島貴和さん(同法人理事)は、女性や宗派に対する差別のない善光寺は「平和の架け橋」として最適の場所だという自負がある。「互いにいがみ合う関係の両国だが、少なくとも日本に滞在中は、平和の感覚を十分に味わっていただきたい。帰国後の現状はどうであれ、日本で味わった平和を思い出して、将来の両国での平和実現のために努力していただきたい」と願う。
51歳で「聖地の平和」のために役立ちたいと奮起し、84歳を迎えた今もなお、法人代表としてプロジェクトを牽引する井上弘子さんは、「次世代を担う若者の心に、一粒でも多く『平和の種』をまくことが必要」とプロジェクトの意義を強調する。
「平和の架け橋プロジェクト」への支援は、郵便振替00180-4-88173「NPO法人聖地のこどもを支える会」、または三菱UFJ銀行新宿中央支店(普通)3926959「聖地のこどもを支える会 代表 井上弘子」まで。今年12月まで受付中。問い合わせは同法人(Tel 03―6908―6571)まで。
【「聖地の今」を知る講演会】
「中東の地殻変動を読む」7月8日(土)午後7時~9時、聖イグナチオ教会(東京都千代田区)ヨゼフホール。講師=出川展恒氏(NHK解説主幹)。入場無料(オンラインのみ500円)。申込フォーム(https://onl.sc/8APcHPV)、オンラインの場合はPeatixサイト(https://seichi-7-8.peatix.com/)から申し込み。
【オルガンコンサート公演スケジュール】
・7月22日(土)14:00~ 京都・日本基督教団平安教会
・7月23日(日)14:00~ 奈良・聖公会奈良基督教会
・7月28日(金)19:00~ 東京・聖公会聖オルバン教会
・7月30日(日)13:30~ 横浜・カトリック山手教会
・8月6日(日)11:45~ 横浜・カトリック藤が丘教会
・8月26日(土)14:00~ 横浜・日本基督教団横浜指路教会
*いずれも30分前に開場。入場無料、カンパ募集。