【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】 「空き家かと思っていました」 安達世羽 2023年7月1日

 「教会があるのは知っていましたが、空き家かと思っていました」――これは、教会が運営するカフェで働く地域の女性から言われた言葉である。私は笑いながらその話を聞いていたが、「これが現実なんだな」とも思わされた。

 私が仕えている松田聖契キリスト教会は神奈川県松田町にある小さな教会である。私は今年4月に神学校を卒業し、この教会に遣わされた。新米の何も分からない者である私は、この教会で毎週10人ちょっとの方々とともに礼拝を捧げている。

 小さな教会だが70年の歴史がある。しかも教会のすぐ裏には町役場、道路の向かいには生涯学習センター、図書館、文化ホールと立地は抜群。グーグルマップで見てみてほしい。平日は交通量の多い通り沿いにあるため、教会が「そこにある」のは認知されていた。けれども、冒頭の通り「そこにある」教会は「空き家」だと思われていたのである。

 確かに教会の扉が開き、礼拝が行われる日曜日、役場は閉じ、人通りも多くない。世間の人から見れば、平日しか見ることがない教会の姿が、「扉は閉まり、電気も消されている」ものならば、「空き家かな」と思われても仕方がない。ところで今はカフェを経営しているので、平日も多くの人が教会に足を運んでいる。このカフェの詳しい働きについては、別の機会に触れたいと思う。

 さて、もう一つ、印象的な言葉。それは「え! あなたが牧師さんなんですか?」という言葉だ。これは近所へのあいさつ回りをした時に、多くの人が口にする言葉である。近所の人々は、教会の働きとして運営するカフェのマスターを牧師だと思っていた。確かに30歳の若造よりも、黒い服を着て、首から十字架をぶら下げて料理をしているマスターの姿を見れば、誰だってこの人が「牧師」なのだと思うだろう。

 「空き家かと思った!」「あなたが牧師ですか!」――これらの言葉から、私は良い刺激をもらった。世間の印象、描くイメージを打破していくことから始めていこうと思ったのである。かくして私は日曜日の朝はもちろん、教会にいる平日も玄関の扉と道路に面している扉を全開にし始めた。そして、道路から見える礼拝堂で仕事をするようにした。「玄関が開いていると、家の中をついつい見てしまう」心理があるのだろう、多くの人が歩きながら教会の中をのぞくようになった。

 そして、中にいる私の姿も目に入る。「教会の中はこうなっているのか」「こんな若造が教会の中にいるのか」……。何を思っているかは分からない。しかし、少なくとも「空き家ではない!」、言い換えれば「教会は死んでいない。〝生きている〟」というイメージを刷り込むことはできているだろう。扉を開けていたせいで、燕が来襲し、礼拝堂が文字通り占拠されることもあったが……。

 「地域に開かれた教会」はもちろん、ゆくゆくは「地域にとって欠かせない教会」になりたいと願っている。そのようなコレカラに向けて、地域の人が持つ印象、教会に対するイメージを打破、アップデートすべく、今日も教会の扉を開き、会う人たちに「あなたが牧師ですか!」と言われている。

あだち・よはね 1993年、神奈川生まれ。名前から「隠れられないキリシタン」として中高生時代を過ごす。大学卒業後、2年間の自殺予防の働きを経て、聖契神学校へ入学。2023年、同校を卒業し、日本聖契キリスト教団松田聖契キリスト教会に赴任。趣味は横浜DeNAベイスターズの応援。

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