【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】 「ここは結婚式場? いや裁判所じゃない?」 安達世羽 2023年7月11日

 「ここは結婚式場かな?」「(説教壇に立ちながら)いや、でもこれ、なんか裁判所っぽいよ!」――私はその言葉を聞き、思わず吹き出してしまった。この一連の会話は、子ども食堂に集う地域の子たちが口にした言葉である。いつかここで結婚式をやってもいいよ、と思いつつ、帰っていく子どもたちを見送る。

 私たちの教会では数年前に牧師館を改築し、カフェにした。ここにも不思議なドラマがあった。神奈川県西湘地区の牧師から、大学の教授を紹介していただき、牧師館を改築することになった。しかしその際、「地域の居場所を作るべきではないか」と教授から良い指摘を受け、カフェスペースにすることが決まった。まさに鶴の一声、いや神の一声である。

 最初は週2日の営業でスタートした。そして、前回登場した「マスター」が加わり、今では火曜日から土曜日の営業、店内での「唐揚げ」や「ハンバーグ」のランチ、パンを販売している。

 教会が位置する松田町は小さな町でパン屋も一つしかない。役場や生涯学習センターの周りにはコンビニもなければ、飲食店もほとんどない。ちなみに町にはスーパーマーケットすらない。「ない」ものだらけである。だからこそ、そんな地域で教会がカフェを開いたことは「無からの創造」である。そして、それは同時に地域の人たちの交流の場、居場所を作り出すことでもあった。

 昨年子ども食堂が始まり、毎回15人の子どもがカフェで作られた食事を礼拝堂でとっている。そして、冒頭のやり取りがあったのである。カフェにやってくるお客さんの中にも、「へー、ここ教会だったんですか」と口にする人も多い。礼拝堂を初めて見たと口にしながら、十字架をじっと見る人もいる。そこで礼拝にお誘いするようなことはあまり言わない。カフェであれ、子ども食堂であれ、教会が「気軽に来られる場所」でありたいと願っているし、ここでの経験が人生のどこかで「また教会に行ってみようかな」と思えるきっかけになってくれればと願って見送る。

 神学校の授業での次の言葉が印象に残っている。「教会は宗教法人を持っている以上、公民館と同じなんだ」。宗教法人を持っていれば固定資産税は免除される。しかし、それは裏を返せば世間の税金によって支えられているということである。信徒の献金だけに支えられているわけではない。だから「公民館なんだ!」というのだ。もちろん教会はキリストのものであり、礼拝の場である。しかし、少し乱暴に言うならば公民館でもある。これは、先ほど登場した大学教授の「地域の居場所を作るべきではないか」という言葉とも重なるだろう。

 各教会、当然、地域性やマンパワーなど異なる。しかし、公民館という意識で考えてみた時、「ない」ものから「ある」を生み出していくヒントが、そして、地方教会のコレカラのヒントが隠されているように思う。

 ちなみに、最近教会で自治会に加入した。自治会長に「教会が加わってくれると嬉しい」とまで言われた。しかも、「この自治会にだけ集会施設がないんですよ」と言うではないか。ここにも、「無からの創造」ができそうな匂いがぷんぷんしている。

あだち・よはね 1993年、神奈川生まれ。名前から「隠れられないキリシタン」として中高生時代を過ごす。大学卒業後、2年間の自殺予防の働きを経て、聖契神学校へ入学。2023年、同校を卒業し、日本聖契キリスト教団松田聖契キリスト教会に赴任。趣味は横浜DeNAベイスターズの応援。

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