第7回日本伝道会議@岐阜レポート 〝福音派〟と同じ課題共有 日本基督教団SCF総主事 野田 沢氏の応答 2023年10月11日
第7回日本伝道会議(JCE7、同実行委員会主催)初日(9月19日)のメインセッションに、日本基督教団から招かれた学生キリスト教友愛会(SCF)総主事の野田沢(のだ・たく)氏による応答が、いわゆる「福音派」にとって知らないことばかりでありつつも、同じ課題を共有する上で大いに役立ったと評価された。当日の発言を抜粋して紹介する。
10年で500教会が無牧に 深刻な高齢化の現実
地方の隅々にまで教会がある強み
今回のJCE7には、お招きいただいただけでなく、登壇の準備の段階からお仲間に加えていただき、半年の間スタッフの方々と準備と祈りをともにできたことも嬉しく思っています。
私たちの日本基督教団は現在、北海道から沖縄まで17教区を構成する教団となりました。教会数1660教会、信徒総数15万8678人、現住陪餐会員7万3069人、現任教師1918人(教会1661、学校230など)、受洗者約900人(過去5年平均)という現状です。
教団の良さでもあり課題は、トップダウンや中央集権ではないというところであり、各個教会の決定や独自性、教区の決定や独自性が担保されています。また、30以上の教派の合同教会であるため、旧教派の違い、教団内での社会派・教会派などの立場、伝道方針の違い、学生紛争期の混乱の中で生まれた自主団体・有志団体などがあり、その自主性も認められています。ある意味、非常に民主的でそれぞれの違いと多様性を担保しますが、まとまりにくい側面があります。
以下、ご発題くださった3人の先生方への応答をさせていただきます。
グローバル化への対応
決して満足ではありませんが、13人を宣教師として海外にお送りしています。また、グローバルな人材を教会が育てるべく、教会青年をできるだけ海外の教会へ派遣することを行っています。これも決して満足のいく数字ではありません。また、日本在住の外国人の方々への伝道などは、それぞれの地域において個別の教会でチャレンジをしていると信じます。
次世代育成の課題
日本福音同盟(JEA)の平均年齢は53.3歳とうかがいましたが、教団はもっと深刻です。70代と80歳以上で50%。平均年齢は60代後半でしょう。青年と呼ばれる30歳未満が5%、50人の教会に2人という現状です。
献身者の減少と高齢化も年々進んでいます。新任教師は、JEAで毎年86.4人、教団は過去5年平均で40.8人。このうち、学校への赴任もありますから、圧倒的に少ない。そして献身者の高齢化も年々進んでいます。2022年度は、教師試験合格者の20~40代と50~70代以上が半々になりました。
教団の教会は、現在283教会が無牧です。10年で500教会が無牧になるとも言われています。いわゆる「2030年問題」です。そのような中、さまざまな理由で教会や学校などに仕えていない、あるいは仕えられない無任所教師653人のヒアリングと再教育、そして教会へと送り出すことを考えています。また、現在651人の隠退教師がおり、老体に鞭打っていただき、日々新たにされながら教会にお仕えいただくことも必要になってくるでしょう。日本基督教団にいる限り、悠々自適な老後は描けそうにありません。
地方宣教の課題と解決
地方伝道の険しさは、私たちもまったく同じうめきを感じています。各教会と教区が、その地域の課題を担い対応と方策を進めていく中で、そのうめきを教団が受け止めていく。教団が方策を立てるのではなく、局地戦を闘っている教会を支えています。
また、個人的な思いではありますが、地方が東京に、都市部に送り出してくれた「実り」を大切に受け取ること。神学や就職で母教会を離れる青年などを大切に受け止め、逃さない。キリスト者学生会(KGK)などに学びつつ、それをこそ突き詰めていきたいのです。
また、教団は特に多くの関係学校がありますから、その実りも大切にしたいと願います。地方のキリスト教学校のチャプレンが、教会に通うまで、信仰を確かなものにするまであと一歩、というところで受験と進学で手放さなければならない種をしっかりと受け止め、芽吹きへと、実りへと導きたい。そこにおいても大きな課題はあるのですが、向き合っていきたいと願います。
また日本基督教団は、さまざまな課題がありながらも日本の隅々にまで教会があるのが強みです。どこに行っても、どんなに小さくても教団の教会はあるのです。他教派の教会で信仰を与えられた信徒が地方に引っ越しても、そこには必ず教会がある。現に、JEAの教会で育った信仰者が、教団の教会員となり、豊かな信仰の見本となって教会を支えているという話もよく聞きます。トヨタにはかないませんが、日産のディーラーよりも多い教団です。どこで買った車でも、どの教会で与えられた信仰でも、メンテナンスと修理ができます。特に地方において、その責任を果たしていきたいと願いますし、多くの他教派の教会から送り出されていることの責任も感じています。
日本基督教団も、他のすべてのキリスト教会における課題をともに負っている一員にすぎないことをぜひ知ってください。もしかすると、皆さんの教派が向き合っておられる課題の、10年、20年先の姿かもしれません。共に祈り合い、知恵を出し合って前に進んでまいりたいと願います。
最後に、同じ日本にあり、程度は違えども同じ課題に直面している私たちはどのようにしてともに進んでいくのか。ボトムアップの日本基督教団としては、まさにそのボトムである各個教会の出会い、地域教会のつながりに尽きるのだと感じます。教会同士、教師や信徒の交わりを通して理解し合いつながっていく。地域の市民クリスマスを合同で行っている地域もよく聞きます。「一緒に」を増やしていくことが、互いの中にある古い偏見を溶かしていくのでしょう。
私は今、教団において青年センターや災害支援の責任を負っています。あの3・11を通してJEA関係の方々との多くの出会いに恵まれ、互いに助け合いました。その後も、九州熊本地震、毎年のような水害、四国、岡山広島の豪雨災害、北海道胆振東部地震、熱海の土石流災害、昨年と今年の東海地方、7月の秋田豪雨、情報の共有など、教派を超えて教会とその地に住む方々のために、仕え祈っていければと願います。
青年センターの側面では、毎年、KGKや青山学院とともに100人規模の青年集会を協働で計画しています。教団の青年がhi-b.a.やKGK、CCCで養われ、松原湖のキャンプから胸を躍らせて帰ってくる青年もいます。
私たち一人ひとりが、教会と教会が出会い、協力し、違いを学び、同じ主を見上げる喜びに満たされつつ、さまざまな困難をともに乗り越えていくことができますように。JCE7の上に、参加された皆さまの教会の上に、万軍の主の力強い導きと祝福がありますようにと祈っています。
(のだ・たく=日本基督教団SCF総主事)
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