功労者に湊晶子氏、近藤勝彦氏 教育事業、神学研究に貢献 日本キリスト教文化協会が顕彰式 2023年11月11日

 第54回キリスト教功労者顕彰式(日本キリスト教文化協会主催)が10月23日、日本基督教団銀座教会(東京都中央区)で開催された。今年は、元東京女子大学学長・広島女学院顧問の湊晶子氏と、元東京神学大学学長・同大名誉教授の近藤勝彦氏が顕彰された。会場には両氏関係者64人が集まり、その喜びを分かち合った。

 同顕彰式は、キリスト教関係の社会事業、教育事業、文化事業、おびキリスト教思想の普及に功労のあった75歳以上の人を顕彰するもので、これまで隅谷三喜男氏(第32回)、徳善義和氏(第45回)など192人が顕彰されてきた。今回は、教育事業およびキリスト教神学に貢献し、大きな功績を残した2人が選ばれた。

 顕彰式は礼拝と祝会の2部構成で行われた。1部は礼拝形式で行われ、賛美、聖書朗読(テモテへの手紙一2章1〜7節)、祈祷、日本キリスト教文化協会評議員の長山信夫氏のあいさつに続いて2人の顕彰者に記念品が贈呈された。続いて顕彰を受けた2人が感謝の言葉を述べた。

 湊氏は、顕彰を共に祝うために駆けつけてくれた関係者――奉職した国際基督教大学をはじめとする四つの大学の学長および理事長、88歳で広島女学院での職を退任してから理事を務めた二つの団体の理事長および副理事長、東京女子大学の学長就任中に設置した博士課程第1号の修了者、東京女子大と広島女学院大の同窓会会長、『初代教会と現代』の出版社社長、そして所属する教会の牧師夫妻らを紹介した。若くして夫を亡くし、シングルマザーとして家庭と仕事を両立させてきた湊氏を助け支えてくれたかけがえのない家族も紹介し、このように語った。

 「私たち家族を支えてくれたのは教会、聖書、祈りです。子どもたちは幼い時に父親を亡くしましたが、教会で祈られて成長することができました。聖書の御言葉があって私は生きることができたのです。この賞は、私一人がいただいたものではなく、ご紹介させていただいたすべての方々のお力の結集として頂戴したものです。あと何年地上に置いていただけるがわかりませんが、感謝して1日1日を過ごしたいと思っております。このような機会を備えてくださったことに心から感謝申し上げます」

 近藤氏は、「伝道者・牧師を養成する神学教育をとおして教会に仕えてきた人生だった」と述べ、「仕えるということは、同時に教会に支えられてきたということで、日本の諸教会に感謝の気持ちを持っている」と話す。東京神学大学での同僚や先輩後輩との交わり、専門の組織神学を深めることができたドイツとアメリカへの留学などを思い起こし、一つひとつに感謝の意を示した。また、家族によって支えられたこと、特に3年前に大病を患い、現在も闘病中の妻の犠牲の上で学者の仕事をしたと感じていることも明かした。さらに「最後の感謝は……」としてこう続けた。

 「説教し、神学し、それによって教会に仕える。このことは神の召しからきたことです。私は繰り返し召命を問うということをしてきましたが、やはり神の召しが一筋に支えてくれ、それがあって歩んでこれたのだと思います。ですから今日このような顕彰を受けることは、召したもう神ご自身が褒め称えられるべきなのです。私の才能、努力はそれほどのものではなかった。そんなふうに考えて、すべての感謝は神にささげることになるのではないかと思っています。心から感謝申し上げます」

 第2部では、キリスト教学校教育同盟理事長の西原廉太氏と、日本基督教団安藤記念教会牧師の長山信夫氏が登壇し、2人の顕彰者それぞれに祝辞を送った。

 西原氏は、湊氏の研究の功績と同時に、各大学での教育者としての働き――中でも12年間にわたる学長の働きについて言及し、その重責を支えた揺るがない信仰に敬意を示した。そして、昨年6月に開催されたキリスト教学校教育同盟110回定時総会で湊氏が「激動の時代を生きる、キリスト教学校の存在意義、戦前・戦中・戦後 5代目キリスト者と生きて」と題して講演を行ったことを話した。

 信仰の継承を紐解きながら、ファミリーがいかにキリスト教学校から大きな影響を受けたか、戦中弾圧にあいながらも母親が唱えるコリント人への手紙二4章8節に励まされたことなどが語られたという。さらに、日本の精神構造に人格教育を根付かせるのはキリスト教学校にあることを新渡戸稲造の人格論から話され、キリスト教学校が大事にしているリベラル教育の原点と使命を明確にした湊氏に、今後もキリスト教学校教育が歩む道を示していただきたいと力を込めた。

 続いて長山氏は、東京神学大学で近藤氏と共に過ごした時代を振り、日本基督教団が荒れた大変な中で近藤氏が著した『礼拝と教会形成の神学』が大きな励ましとなったことを明かした。プロテスタント信仰150周年でも『福音主義自由教会の道』をとおして取り組むべき事柄が示されたという。「組織神学者として現代の日本の課題を絶えず意識しながら研究を発表してくださり、日本の教会、キリスト教主義の学校にとって、どれほど大きな支えになったか思わないでいられません」

 近藤氏が組織神学者として神から与えられている課題として、「キリスト教教義学」「キリスト教弁証学」「キリスト教倫理学」を表すことを挙げていたことにも触れ、「それらを懸命に成し遂げていく姿に非常に励まされ、感嘆せずにいられませんでした」と述べた。さらに、安藤記念教会で月に1度、近藤氏に説教を担当してもらい、それが教会の恵の時となっていることを伝え、「近藤先生という稀有な存在が日本のキリスト教会に与えられていることを覚え、これからも教会のために力を尽くしていただけたら感謝です」と結んだ。

湊 晶子
 みなと・あきこ 1932年、仙台生まれ、神戸育ち。5代目キリスト者。日本東京女子大学文学部社会科学科卒業。フルブライト奨学生としてホイートン大学院(神学修士・2008年名誉博士)。ボストンのパークストリート日本人教会で牧会。ハーバード大学客員研究員、国際基督教大学、東京基督教大学及び東京女子大学教授を経て、 東京女子大学学長(2002~10年)、広島女学院院長・学長(14~21年)を歴任。退任後は、国際NGOワールド・ビジョン・ジャパン理事、国際開発救援財団理事、国連ユニタール協会理事を務める。日本福音キリスト教会連合キリスト教朝顔教会教師。二男一女の母。著書:『初代教会と現代』(2018年、ヨベル)、『現代(いま)を生かす新渡戸稲造の人格教育』(2023年、キリスト新聞社)、『女性を生きる』(2010年、角川書店)ほか多数。

近藤勝彦
 こんどう・かつひこ 1943年、東京生まれ。東京大学文学部卒業。東京神学大学大学院修士課程修了。77年チュービンゲン大学より博士号を授与された。東京神学大学常勤講師、同大学助教授、教授(組織神学)を経て、同大学学長(2009〜13年)、同大学理事長(20〜22年)を歴任。現在は同大学名誉教授。一方、08年に日本キリスト教文化協会理事に就任し、14年〜22年まで同協会理事長を務めた。18〜22年には日本基督教学会理事長も務めている。日本基督教団銀座教会協力牧師。著書:『二十世紀の主要な神学者たち』(2011年)、『キリスト教弁証論』(2016年)、『キリスト教教義学』(上下巻、2021年、2022年)、『わたしの神学六十年』(2023年、以上教文館)ほか多数。

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