【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】 カトリック教会での定年は? 平林冬樹
Q.カトリック教会の役職には定年が決められていますか?(50代・女性)
カトリック教会の役職には、大きく分けて二つの種類があります。一つは按手によって与えられる職。もう一つは組織としての教会内で一定の仕事のために、辞令や任命書によって命ぜられる役職です。
按手によるものは、助祭(diaconus)、司祭(presbyterius)、司教(episcopus)の三つです。カトリック教会では、これらの役職はキリストの制定に由来すると考えられています。そこで、人を教会の名によってこれら三つの役職に就けることは秘跡(sacrament)とされています。
助祭・司祭・司教は、按手によって神から取り分けられた人、つまり聖別された者にされるので、一般に聖職者と呼ばれます。聖職者は、単にあれこれの仕事で成果を上げるために選ばれるのではありません。生涯かけて全人格的に神に奉仕するよう神に選ばれた人です。ですから聖職者には定年がないばかりか、本来、私的な生活もない。全面的に神のために生きるよう召された者です。
それに対して教会組織の維持・管理に当たる役職があります。これには教皇、教区長、権司教(monseigneur)、小教区の主任司祭などが数えられます。これらはその性質上、司祭・司教の任務と堅く結ばれているので、聖職者の中から登用されます。しかし、教皇の顧問である枢機卿や、教皇庁の各省庁の長官など、制度上はともかく、神学的に見て、一般信徒に委ねる可能性があるものは多くあります。
いずれにしても、組織の維持・管理ための一定の任務ですから、ある条件のもとで辞職や罷免が可能です。それらの条件には、現行では年齢制限も含まれます。例えは現在、教区長は、75歳が定年で、その年齢に達すると教皇の承認によって教区長職から退きます。しかし、司教は按手によって神に聖別された者ですから、死ぬまで司教職に留まります。
このようにカトリック教会では、聖別由来の役務とそれ以外の役職が区別され、後者には定年があります。
*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。
ひらばやし・ふゆき 1951年フランス、パリ生まれ。イエズス会司祭。上智大学大学院神学研究科博士前期課程、教皇庁立グレゴリアーナ大学大学院教義神学専攻博士後期課程修了。教皇庁諸宗教対話評議会東アジア担当、(宗)カトリック中央協議会秘書室広報部長、 研究企画部長などを経て、日本カトリック司教協議会列聖推進委員会秘書、上智大学神学部非常勤講師。