〝ゆるゆる〟×〝どろどろ〟対談 ジュンク堂で清涼院流水さんとMAROさん「伝道しないことが伝道」 2023年12月8日

 カトリック信者で作家の清涼院流水さんによる新刊『どろどろの聖人伝』(朝日新聞出版)の出版を記念するトークイベント「〝ゆるゆる〟と〝どろどろ〟のキリスト教」(朝日新聞出版、日本聖書協会、ジュンク堂池袋店共催)が11月21日、ジュンク堂池袋店(東京都豊島区)とオンラインのハイブリットで開催された。対談の相手は、単立上馬キリスト教会のSNSによる「ゆるい」発信を機に多くの著書を執筆してきたMAROさん。本紙編集長の松谷信司が司会を務め、教派を超えて、聖書の魅力とその伝達者としての気概について語り合った。

 『どろどろの聖書』『どろどろのキリスト教』に続くシリーズ3作目となる『どろどろの聖人伝』は、キリスト教における数々の聖人を取り上げ、知られざる逸話を紹介する。

 『世界一ゆるい聖書入門』を読んで以来、MAROさんをリスペクトしてきたという清涼院さんは、「どろどろ」と「ゆるゆる」の違いはあっても、実は両者とも聖書やキリスト教に「愛あるツッコミ」を入れている点で共通していると話す。

 プロテスタントには聖人の概念がない上に、聖書以外の「聖人伝」にしか登場しない物語も多いため、カトリックの信徒でさえ知らないことばかり。今回、そうした信者にとっても新しい発見となる本が書けたことは良かったと振り返る清涼院さん。

 「日本人はキリスト教を知らなすぎる。知った後で信じるかどうかはその人の自由だが、興味があるのに知らないという現状は変えていきたい」

 MAROさんは両者の発信に共通することとして、牧師ではない信徒の立場にあるからこそ、ある程度自由にできる利点があり、同じことを神父や牧師に期待するのは難しいと分析した。

 両者の書籍が一般の出版社から刊行されていることの意味も大きい。司会が「キリスト教の出版社だと、身内を褒めるための身内の本ばかり出してしまう傾向がある」と自虐気味に語ると2人とも、いわゆる「伝道集会」も実際には外向けに機能していないと共感を示した。

 「伝道しないことこそが伝道」だと清涼院さんが逆説的に語ると、MAROさんは「宗教は社会インフラの問題でもあり、社会資源としての存在意義についてもっと考えてほしい」と応じた。

 AIの進歩と出版界の低迷が懸念される中、伝える手段はどう変化していくのかについても語り合った。「たとえ本がなくなっても文字はなくならない。伝達方法が変わるだけで、それにあったメディアで文字を書き続ければいい」とMAROさん。清涼院さんは、コロナ禍以降に急増したオンライン礼拝(ミサ配信)が、キリスト教を広める上でハードルを下げるために一役買っているとし、まずは画面上で礼拝をのぞいてから、実際に聖書を読んだり、教会に行く道筋を提案した。

 大学で哲学を専攻していたMAROさんは、聖書を読んでから西洋哲学がすんなり理解できるようになったという。清涼院さんも、聖書を知ってから海外ミステリーの面白さがより実感できるようになったという自身の体験から、入り口として2人の著書を活用してほしいと締めくくった。

宣教・教会・神学一覧ページへ

宣教・教会・神学の最新記事一覧

  • 聖コレクション リアル神ゲーあります。「聖書で、遊ぼう。」聖書コレクション
  • 求人/募集/招聘