「金持ちであることは心に悪い?」 米宗教学者の考察 2024年1月8日

 「金持ちであることは魂をボロボロにする。私たちはそれを知っていた」――ワシントン・ポスト紙で初めてこの見出しを目にして以来、7年近くこの見出しが頭から離れない。以下は、バージニア大学(UVA)の宗教学者2人が、古代哲学とキリスト教神学の原理を考察し、マモン(ヘブル語でお金、富)の祭壇で礼拝する人々のメンタルヘルスについて指摘した「レリジョン・ニュース・サービス」のオピニオン記事である。

 UVAのチャールズ・マシューズ教授と共著者のエヴァン・サンズマーク氏(その後、アメリカ宗教アカデミーの出版コーディネーターに転身)は、ドナルド・トランプ氏の魂に富がもたらしたものと、フランシスコ教皇の清貧の誓いとの間に痛烈なコントラストを描き、金持ちの生活はそうでない人々の生活よりも悪いことを示す研究を次々に引用した。

 とりわけ、金持ちは慈善事業への寄付が比例して少なく、脱税がひどく、苦しんでいる人々への思いやりが少ない。ある研究によれば、大金持ちのそばにいるだけで、普通の人々は他人と分かち合おうとしなくなるそうだ。それはサウロンの指輪(『指輪物語』のラスボスの力の指輪。切り落とされたことで肉体を滅ぼされた)の効果に例えるなら、その力は触れた者を変えてしまうということだ。

 この記事は私の神経を逆なでしたので、私は2019年に出版した著書『Resisting Throwaway Culture』の中で、消費資本主義がそれによって搾取される人々だけでなく、ある観点から見れば(地獄が方程式から除外されたとしても)加害者にとってはさらに悪い影響を与える可能性があるという典型的な例として紹介した。それは私たちの消費主義的な使い捨て文化が、中絶や自殺幇助、さらには工場農場での動物の扱い方など、深刻で目に見える非経済的な影響を及ぼしているという私の主張に大いに寄与している。

 ジェニファー・ウィルソン氏が最近『ニューヨーカー』誌に寄稿した記事「ソーシャルメディア・ティーザー」を見た時、金持ちが使い捨て文化を促進するという考えが再び頭に浮かんだ:「ポリアモリー(複数のパートナーとの親密な関係を持つこと)の階層上位化、パーク・スロープ(ニューヨーク・ブルックリンの地名)のオープン・マリッジ(婚外交渉を認め合う夫婦の形)、恋人は共有するが富は共有しない人々について私は書いた」

 この記事は、いわゆる「合意の上での非一夫一婦制」がエリートや裕福な人々の間で流行していることを力説している。一夫一婦制は「欠乏文化の徴候」であり、オープン・カップル(パートナー以外の交渉を認め合う)、スループル(3人で関係を持つ)、ポリキュール(複数人と同時に交渉を持つ)は「豊かさ志向のマインドセット」であるとする。

 しかし、実際には一夫一婦制こそが、特に最も弱い人々の間に豊かさを生み出しているのだ。一人の母親と一人の父親との永続的な結婚に根ざした伝統的な家族の安定した力を証明する証拠はあまりにも多く、一夫一婦制の結婚は今や子どもたちの人権として理解されるべきである。さらには、経済的に脆弱な地域社会は、単に富裕層の「豊かさ志向のマインドセット」を受け入れる余裕がないということもある。

 富裕層は、自分たちがより豊かになるためなら、残りの人生に価値を与えるものを捨てても構わないと考えてきた。エクトライフという会社は、投資家さえ見つかれば、提供された精子と卵子を使って、巨大な赤ちゃん工場で「年間3万人の赤ちゃんを育て」るという事業計画の真っ最中である。

 リバタリアン(個人的、経済的自由を重視する人々)のCATO研究所は、ほとんどすべての税制と社会プログラムへの支出に抵抗しているが、最近、「高齢、同性、生殖能力のある人々」の不妊についての記事の中で、「外部子宮」のアイデアを支持し、この技術は「いつの日か、妊娠の全過程をアウトソーシングできるほど進歩するかもしれないと言っている。

 ノートルダム大学の著名な神学者であるジョン・カヴァディーニ氏は、最近『教会生活ジャーナル』の紙面で、このコンセプトはオルダス・ハクスリーがそのディストピア小説『ブレイブ・ニュー・ワールド』で予言したことを不気味に彷彿とさせると指摘した。

 私たちの消費主義的、技術主義的文化は、セックスを子孫繁栄から切り離す方法をどんどん見つけている。それはまた、私たちの身体のもうひとつの有効な機能である「仕事」を軽んじるよう歪められている。最近は、インターネットを利用していると、人工知能に関する記事を目にしない日はほとんどない。これらの記事に登場するほとんどの人は、AIが将来支配的になるという見通しに不安を抱いているようで、多くの場合、AIが優良なブルーカラーの仕事に何をもたらすかを問うている。アメリカ人男性の間では、すでに失業という隠れた疫病が蔓延している。AIは、すでに深刻な問題をさらに悪化させるだろう。

 AIに無関心に見えるのは億万長者たちだけで、彼らは来るべきジェネレーティブAI革命(第四次産業革命と呼ぶ人もいる)が「大きな利益」を生み出すと期待している。

 もちろん、それは規制がなければの話だが。私たちの文化は、消費主義的な考え方がいかに私たちの魂を変形させ、破壊的な道を歩ませるかを理解させることができるだろうか? それを見た上で、最も弱い立場にある人々にどのような影響を与えるかに目を向け、社会的関係を規制する政治的意志を奮い立たせることができるだろうか。私たちの中で最も弱い立場の人たちを優遇することができるだろうか? 消費者の使い捨て文化のために、巻き添えになって捨てられる人々のために?

 マジック8ボール(アメリカの占い玩具)の不朽の名言を借りれば、「兆候はNOを示している」。少なくとも今のところは。しかし、歴史は、支配的な文化に対する反動が起こりうること、そして実際に起こることを証明している。特権階級が貧しい人々を犠牲にして自らを豊かにする新たな時代に向かう今、そのような反動がこれまでになく必要とされている。

(翻訳協力=中山信之)

Image by Zlaťáky from Pixabay

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