【異端・カルト110番】 旧万民教会牧師2人が「悔い改めと告白」発表 日韓の異端・カルト問題担当牧師らがヒアリング 2024年1月20日
韓国主要教団から異端規定を受けてきた万民中央教会から派遣された柳承吉宣教師によって開拓された日本の万民教会は、李載禄(イ・ジェロク)堂会長の性犯罪で実刑判決が確定した2019年に解散し、万民中央教会/李載禄の異端性が明らかになったとして、中心的な飯田、松本などの4教会が万民中央教会から離脱したことを明らかにし、Webサイト上に謝罪文を発表していた。異端・カルト110番は2019年10月その事実を伝えるとともに、「韓国教会が長い間、李載録の神格化を指摘してきたにもかかわらず、日本の関係教会は今までどうして彼らと一緒に活動したのか、きちんと検証されなければならない」として慎重に対応してきた。
その後、異端・カルト110番の共同代表で日本キリスト教異端相談所所長の張清益(チャン・チョンイク)氏は、柳承吉氏と面談し、旧飯田万民教会で異端セミナーを開くなどしてきたが、改称した「イエスキリスト飯田福音教会」の柳承吉牧師、同じく「イエスキリスト松本教会」の伊藤正明牧師がこのほど連名で諸教会に向け、「悔い改めと告白」を明らかにした。これを受けて1月7日、異端・カルト110番の共同代表である小岩裕一氏、齋藤篤氏、張清益氏と根田祥一編集顧問、在日韓国基督教連合会所属の異端分科委員である崔南道(チェ・ナムド)会長、洪徳杓(ホン・トクピョ)氏、林東琥(イム・ドンウォン)氏、金秉喆(キム・ビョンチョル)氏が、オンラインで柳・伊藤両氏からヒアリングを行った。
柳氏は、大韓イエス教長老会統合の出身で長老派の神学大学に在学中の1988年、当時「聖書どおりの教えが『みことばの道』と言われ行われている」との評判を聞いて万民中央教会に加入した。93年に海外宣教師として日本に派遣され、長野県飯田市を拠点に開拓伝道を進め全国14教会にまでなった日本万民総会を率いてきた(「悔い改めと告白」に概要)。ヒアリングでは、その経緯や、2000年頃から李載録の言動に疑問を抱くようになり、2010年代に異端の疑いを深め、内部改革を試みたが万民中央教会と決裂し脱会したことなどを述べた。
ヒアリングでは、「万民中央教会は韓国教会で30年来異端だと言われてきたのになぜ気づかなかったのか」、「どこが異端教理で正統教理とどのように違うのか理解することが重要だが、正統教理をどの神学校で学んだのか」、「現在はどのような諸教会と交わりを持っているのか」などについて質問を受けた。
柳氏は、「李載録の説く『みことばの道』は素晴らしいと思っていたが、その内容は純福音系のいくつかの教えを組み合わせていたことを後で知った。聖霊派の恵みがあるところに憧れがあったが、李載録が神格化されていることにそのときは気がつかなかった。今はそれがおかしいと分かる。洗脳がいかに恐ろしいか身をもって感じた。李載録は途中から変わっていったと思ったが、そうではなく最初から悪霊に操られていた。(万民中央教会で強調されてきた李載録による)癒しも奇跡も、(憧れた当時は)すごいことだと感じていたが、今にして思えば悪霊の惑わしだった」などと述べた。
1988年当時に在籍していた長老派の神学大学は万民中央教会に加入したことによって卒業できず、脱会後に別の長老系の総会神学大学院(合同改革)で学び直して卒業したという。改めて日本の福音主義の神学校で学び直したい意向も明かした。「間違ったものを日本に持ってきて14教会を作った私の責任は重い。これからはイエスキリストの福音だけを伝えていきたい。教会のホームページで説教の動画を公開しているので、もし私の教えに間違っていることがあったら教えていただきたい」と柳氏は要請した。
伊藤氏は、ペンテコステ系の小川イエス福音教会で救われ、生駒聖書学院を卒業。1995年に柳氏と出会って万民教会を知り、誘われて韓国の万民中央教会に行き、「神様のことばどおりに生き、歩んでいきなさい。そうすればみことばどおりになります」と教えられて心動かされ、2004年に加入した。「周りから万民は異端だと聞いたが、韓国語が分からないので万民教会についての情報は通訳で聞いたものしかなかった。世界の終わりの時に用いられる教会だと言われ、そう信じていた」。柳氏は「伊藤先生が万民は異端だと分からなかったのは私の責任。私がまずいと思ったところは通訳しなかった」と説明した。現在は、毎月第2月曜に信州地区の30人前後の牧師らと祈り会をしているという。
なお、李載禄堂会長は、複数の女性信者への準強姦罪で有罪判決が確定し16年の刑で服役中していたが、末期大腸がんのため刑執行停止・闘病中の昨年12月31日、死亡した。
異端・カルト110番の共同代表らは、このヒアリングを受けて次のようにコメントしている。
張清益(日本キリスト教異端相談所所長、とねりキリスト教会主任牧師):
昨年12月31日、万民中央教会の李載禄(イ・ジェロク)の死亡ニュースが速報で伝えられた(享年80歳)。李載禄は1999年以来、韓国の主要教団から異端であるとの決議がなされた人物であった。そして2019年、女性信徒に対する性的暴行罪により16年の宣告を受け、服役中に病死した。
もちろん我々は、今までも当団体に関する様々な異端的情報を基に日本国内に警鐘を鳴らしてきた。問題は日本に長い間、李載禄の影響下で活動をしてきた万民教会のグループの存在があったということだった。 その中でも最も中心的な役割を果たしてきた人物が、長野県飯田市にある飯田万民教会の柳承吉氏だった。彼が主導して開拓された教会だけでも日本全国に14教会もあった。
しかし、喜ばしいことに昨年11月、彼がすでに万民を脱会したというニュースとともに私に会いたいという連絡を受けた。そこで私は急いで長野県に向かった。1泊2日間、一緒に時間を過ごしながら、彼が万民に入ることになった経緯と、そこでどのように活動したのかという情報、そしてどのように脱会を決心するようになったのかについての経緯を詳しく聞くことになった。そして14の教会の連合体がすでに解散していることも聞いた(名古屋万民、東京田端万民、旭川万民はまだ少数で活動している)。そして彼の「脱会」の真実性を知ることになった。柳承吉氏は、これまで李載禄の万民に身を投じて活動した過ちに対し、徹底した悔い改めとともに、日本のキリスト教界に心より謝罪した。そして今後、日本の神学校(聖契)でもう一度神学を学びなおすことを明らかにした。
しかし、私一人だけの判断で柳氏を正統教会の一員として受け入れることにはリスクが大きすぎる。そこで異端・カルト110番の共同代表と編集顧問、そして在日韓国キリスト教連合会所属の異端分科委員ら計8人に連絡して旧飯田万民教会の柳承吉氏、旧松本万民教会の伊藤正明氏に対して急遽ヒアリングを行った。
今や私たちに重い課題が投げかけられた。それは、彼らがどのように教会の健全性を回復し宣教の同労者として迎えられるべきか、ということだった。使徒パウロもイエス・キリストに出会う前には律法主義という異端に捕らわれて教会を迫害した暗い過去があった。しかし、彼が絶大なる福音の恵みに気づいた後、誰よりも優れた福音の働き人として用いられた。
長い間、万民の異端性に対する無知と誤った情熱を注いできた柳氏らが、誤りなきキリストの福音に立ち帰り福音の働き人として用いられること願う。私たちは彼らのために祈り、彼らの行く末を見届けたいと思う。
小岩裕一(日本イエス・キリスト教団総務局相談室長「異端・カルト問題、ハラスメント問題」担当、和歌山教会・湯浅教会・由良教会牧師):
1月7日、オンラインで、柳承吉氏、伊藤正明氏の万民教会からの脱会の意思と、悔い改めの心と、今後の福音宣教の思いをお聞きしました。両氏共に、万民教会の異端性とマインド・コントロール支配下にあったことを認識していました。李載録の癒しも奇跡も、最初から悪霊による現象であると断定していました。長老派の教会に属しながら異端と判断できなかったのは「洗脳されていた」(マインド・コントロール)と明言されました。今後、見聞きしてきた「万民教会」の教えの異端性を明らかにして欲しいとの要望を快諾されました。異端に属していたことの悔い改めの思いと、福音的な教会と共に歩みたいとの願いは、真実であると感じました。両氏の今後の福音宣教の働きを見守り、お祈りいたします。
齋藤篤(日本基督教団カルト問題連絡会世話人、仙台宮城野教会牧師):
万民中央教会については、私が日本基督教団東海教区(長野県・山梨県・静岡県)のカルト問題担当者であった頃、飯田市内にある「飯田万民教会」の異端・カルト性が話題に出されるようになりました。2010年頃と記憶しています。その後、私も転任によって直接問題に関わることは無くなりましたが、以来、気になり続けていた存在です。それだけに、今回、柳牧師と伊藤氏からの証言と決意を伺ったときに、その勇気ある決断に敬意を表しつつも、新しく歩もうとする教会が、再び誤導されることのないように、周囲がキリストの愛と和らぎをもって、時には優しく、時には厳しさをともないながら、主にある交流を持つことが、健全さを維持することのできる道であると、私は思っております。
また、今回の万民中央教会における一連の出来事は、決して「他人事」にしてはならないことであると、私は感じております。私たちも、いつでも異端化・カルト化する可能性のある存在であることを決して忘れることなく、よき教訓として大いに学びたいと心から願うばかりです。
各教会御中
悔い改めと告白
私、柳 承吉は、クリスチャンの家庭で生まれ、韓国の長老派教会で信仰を育ててもらい、長老派神学大学に在学中の1988年、その当時は異端と思われなかった韓国の万民中央教会に入りました。以前から宣教師を目指していた私は、5年後の1993年に日本へ宣教師として派遣され、長野県飯田市の飯田万民教会で活動をしてまいりました。
日本に来てからは、それまで身についていた福音で宣教をしていたので、ただ、イエスキリストのみを伝えるつもりでありました。
しかし、25年間私が歩んだその道が間違った異端であるということに気づいた時は、途轍もないショックでしたが直ぐに決心をして、25年間導いていた日本万民総会(当時14教会)の皆さんを招集し、万民教会の異端性とイ ジェロクの犯罪について説明をして総会を解散しました。
その結果、ほとんどの教会と聖徒たちは、約5年前に韓国万民教会より完全脱会をしましたが、名古屋万民、東京田端万民、旭川万民は名前だけではありますが未だに残っている現状です。
そして、今は飯田と松本教会だけは、新たに福音に立つ教会として再スタートをいたしました。
この場をお借りして25年間、間違った道を教え、歩んできましたことを深く悔い改め、正しい道を歩まれていた各教会の皆様にも大変ご迷惑またご心配をお掛け致しましたこと、心からお詫びいたします。本当に申し訳ございませんでした。
このように間違った道を教えてきた私の行ないは、最早取り返せるものでもなく、いっそのこと牧会を辞めることも考えましたが、 ただ、主に申し訳なく、それは責任を放棄することにもつながります。蒔いた種は自分で刈り取るべきであり、新しい種を蒔く責任を痛切に感じました。
私にとっては苦渋の決断でありましたが、感謝なことに教会の聖徒たちも理解してくれ、新しく歩みはじめて5年が経過いたしました。
過去を悔い改め、これから正しい福音をのべ伝えていくことは簡単なことではありませんが、父なる神様の導きのもと、真摯に取り組んでいく所存です。
これからもただ主だけを見つめ、正しい信仰を伝える者として祈りつつ仕えていくことを決心しております。
どうぞご理解くださり、ご指導を賜りますよう、お願いいたします。
イエスキリスト飯田福音教会牧師 柳 承吉
イエスキリスト松本教会牧師 伊藤 正明