【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】 え! 少なっ! 安達世羽 2024年3月1日

 2022年9月、松田教会に着任する前、いわゆる「お見合い説教」で講壇に立った時の第一印象がタイトルの言葉である。これまで規模の大きい教会に通っていた私にとって、礼拝出席者10名ほどの教会での奉仕は初めてである。会堂の椅子はスカスカ。拍子抜けしてしまったのが正直なところである。

 「この教会は本当にこのままで大丈夫だろうか?」と帰りの電車で思った。しかし、いろいろと思う中でこんなことを神様にガツンと言われた気がした。「目の前の人数ばかりを見るんじゃない!」

 確かに教会に集っている一人ひとりの背後にはさまざまな人がいる。家族、友人、職場、地域の人。数えたらキリがない。「礼拝に出席している人数に一喜一憂するな。その背後にいる、いろんな人たちにわたしの祝福を届けることを考えろ!」

 そうガツンと言われた私は、今こうして「え! 少なっ!」と思った教会で仕え、「少ない」人数で一緒に礼拝を捧げている。

 そんな松田教会では、無牧の時代に「家族感謝会」という企画が、信徒たちによって行われたことがある。教会員の中には、家族の送迎がないと教会に来ることができない人も少なくない。また家族からすれば、せっかくの日曜休みの半日を「奪われている」とも言える。信徒たちは自発的に、家族に対して日々の感謝を表そうと、家族をゲストとして招き、食事を通してもてなす企画を開催したのだ。

 この企画は今年の1月にも行われた。食事のための献金集め、家族の招待、調理、配膳、BGMの演奏……、さまざまな奉仕を分担し、精一杯家族をもてなす。普段は送迎だけして会堂の中には入らない家族も、この日だけは会堂の中で一緒に食事をする。もちろん「食前の祈り」や「締めの祈り」はしない。純粋に感謝を表し、教会とのつながりが生まれればそれでなにより。みな、そんな思いを持っていた。そして、最後には集合写真をパシャリ。するとどうだろう。「え! 少なっ!」とは決して思わない。目の前の人の背後に、どれだけの人がいるのか。神様はそのことを改めて教えてくれた。

 会を経て礼拝に出席するようになった。礼拝出席者が増えた! ……そんな話はない。家族はいつも通り送迎だけして礼拝には参加しない。「いつも通り」にまた戻り、礼拝が行われる。しかし、それでも「先日はどうもありがとうございました」と「いつもとは違う」あいさつが送迎の時にできる。「先日はどうも」という「つながり」ができた。「主人もこの会を通して教会との距離が身近になった気がするし、私ももっと家族に感謝しないと」という信徒の声もあった。それで十分じゃないか。

 「目の前の人数に一喜一憂するな。わたしが見せたいものはそんな小さなものではない。神の国はそんなちっぽけなものではない!」

 そう神様は強く語っていると私は感じる。礼拝の人数が減少している。高齢化している。子どもがいない。いろんな「課題」と言われるものが地方教会にはたくさんある。でも、それがなんだ。神様はそんな目の前の「人数」を見ろと言っているのだろうか。地方教会にこそ見せてくださる「神の国」の豊かさが、実はあるのではないだろうか!

あだち・よはね 1993年、神奈川生まれ。名前から「隠れられないキリシタン」として中高生時代を過ごす。大学卒業後、2年間の自殺予防の働きを経て、聖契神学校へ入学。2023年、同校を卒業し、日本聖契キリスト教団松田聖契キリスト教会に赴任。趣味は横浜DeNAベイスターズの応援。

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