信濃町教会100周年記念 佐藤司郎氏が講演 「告白する教会」としての歩み 2024年3月29日

 日本基督教団信濃町教会(東京都新宿区)が創立100周年を迎えるのを記念し、同教会の歴史を振り返りつつ、現在、未来を問いかける公開講演会が2月から始まった。3月17日には第2回目が開催され、佐藤司郎氏(東北学院大学名誉教授、尚絅学院学院長)が、礼拝堂に集まった約90人を前に「世のための教会をめざして」と題して講演を行った。

 同教会は、1924年6月1日、東京都新宿区の高倉徳太郎牧師の自宅に信徒25人が集まって礼拝をささげたところから誕生。戦時中、キリスト教の諸教派が合同して日本基督教団が生まれ、戦後は戦争の問題に苦しみつつも荒廃した教会の再建に努めた。73年、世の苦しみと深く連帯しつつ福音を宣べ伝えることを決意し、宣教方針として「告白する教会」を掲げ、97年には宣教の基本姿勢である「われらの志」を発表。罪責の立場に立ち、悔い改めて主イエス・キリストに従い、「世のための教会」として平和の使者の道を選択し、今日に至る。

 佐藤氏は1987年9月から98年3月まで10年以上にわたり、信濃町教会で奉仕。この日は、同教会100年の歴史の後半――「告白する教会」を掲げるようになった1973年ごろから現在に至るまでを、『七十五年史』(1999年に刊行)を手がかりに振り返った。宣教の基本姿勢である「告白する教会」および「世のための教会」について改めてその意味を探り、これから宣教の第2世紀に入る同教会の進むべき道を展望した。

 同教会では1973年、「告白する教会」という立場を明らかにし、それ以降毎年「告白する教会」が年度方針として掲げられた。『七十五年史』によると、佐藤氏が牧師に就任した91年も「告白する教会の継承」となっている。このように50年前から示されてきた「告白する教会」だが、これは決して突然生まれたものではなく、67年に日本基督教団が発表した「第二次対戦下における日本基督教団の責任についての告白(教団戦責告白)」に始まる教会内外の出来事に、教会が信仰的に神学的に真剣に取り組んだところから生まれたものであった。佐藤氏は「宗教化することも世俗化することも両方に否を唱え、教会と世的な間にある課題や矛盾をそのまま抱えながら、キリストの勝利の信仰に固く立って、教会における信仰告白を、私たちの生活に関するあらゆる領域でも継続していく。この世においてイエス・キリストを主と告白し、そのために信じ従い、祈り、たたかう教会。それが告白する教会です」と述べた。

 また「告白する教会」に関連することとしてカール・バルトが語った信仰の三つの側面(信仰とは認識・信頼・告白)を挙げ、「信仰を告白するということは、自分が不利な立場に置かれること、命さえも危険に晒(さら)すこと。同教会が教団戦責告白の問題を受ける中で、告白する教会として歩んだ意味は小さくない」と力を込めた。

 91年以降になると「告白する教会」を継承・発展させたものとして「世のための教会」が示されることになる。ただし、60年代の時とは違い重視されるのは「教会は何のためにあるのか」ということだった。カール・バルトが「教会とは、集められる(エクレシア)・たて上げる・遣わされる(ミッション)こと」と述べたことや、『和解論』の中で「教会は世のためにある」と語っていることにも触れ、「これらは今日の教会の在り方であり、カール・バルトの影響を受けている教会だけでなく、カトリックも含めて全ての教会が世のために遣わされる教会を実践している」と語った。

 また、「世のための教会」の基本的な考えが示されている聖句として、ヨハネによる福音書3章16〜17節、コリントの信徒への手紙二5章19節を挙げ、ここから「世のための教会」について、「自己目的に存在していては教会ではありません。教会は神のために存在するがゆえに世のために存在するものでなければなりません。世の極みまで愛し、十字架にご自身をささげられたイエス・キリストの証人として教会は世に遣わされている、これを捉えておきたい。そして、教会の使命の最も主なるものは福音の宣教です。世のための教会とはつまり宣教する教会、伝道する教会です」と語った。

 さらに同教会創立者の高倉徳太郎牧師が1927年に刊行した『福音的キリスト』から一部を引用し、こう締めくくった。「ここにある『神の国はこの世と対立する歴史とに対して絶えず戦う』、これが告白する教会の宣教・伝道です。世のための教会として生きるわたしどもの在り方です。これからも告白する教会として、世のための教会として、世の平和(シャローム)のために、地の塩・世の光を高く掲げ続けていただきたいと心から願っています」

 今後の100周年記念公開講演会は以下のとおり。

・第3回 5月12日(日)後2時〜3時半
「今、教会はどこに立つのか?――聖書解釈の現在」小友聡氏(東京神学大学教授、日本基督教団中村町教会牧師)

・100周年記念講演会 6月23日(日)後1時半〜3時
「『告白する教会』であり続ける」笠原義久氏(前信濃町教会牧師、元日本聖書神学校校長)

 会場はいずれも日本基督教団信濃町教会礼拝堂(東京都新宿区)。入場無料/申込不要。

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