クリスチャントゥデイ裁判 東京地裁 〝信仰を隠して接近〟と認定 名誉棄損は一部認める 2024年5月11日

 株式会社クリスチャントゥデイ(矢田喬大社長)がクリスチャン新聞顧問の根田祥一氏に対し、SNSでの投稿などが名誉棄損にあたると訴えていた裁判で、東京地裁(小松秀大裁判官)は4月22日、110万円の賠償請求に対し50万円のみ支払いを命じる判決を下した。匿名で開設されたブログ「ダビデ牧師(張在亨=ジャン・ジェヒョン=ダビデ張)と共同体を考える会」の記事を引用した投稿について、一部については名誉毀損が成立すると判断したもの。

 訴状によると原告は、同ブログは事実に反する「攻撃的、侮辱的な表現」が用いられており、他人から聴き取った内容を「体験談」を装って書かれていると主張。根田氏が拡散したことで社会的評価が貶(おとし)められたと訴えていた。

 この裁判では昨年12月、被告側の証人として、2000年代初頭、ダビデ張氏が指導する共同体に属し、同氏の指示でクリスチャントゥデイに勤務した経験もあるという2人の脱会者が出廷。当該ブログに記した無給による長時間労働や、虚偽の説明を強いられた実態について詳しく語った。原告側は「共同体」なるものは存在せず、証人尋問も不要と主張したが、判決は証言内容について詳細に検証している。

 クリスチャントゥデイをめぐってはこれまで、疑惑を追及する救世軍の山谷真氏を相手どり名誉棄損で訴えた2008年以来、13年の判決で名誉棄損が部分的に認められたものの、18年に契約・委託社員を含む従業員が一斉に離職したことを機に、同社の実態が問題視されていた。

 山谷氏の裁判では、「張在亨が来臨のキリストであることが明示的に記載された部分」はなく、そのような教えが教会で教え込まれていたことを裏付ける客観的証拠はないとされていたが、今回の判決は脱会者の証言に基づき、「張牧師が『再臨のキリスト』であるとの信仰を秘し、淀橋教会又はその所属団体の宗教上の理念に従順である態度を示して」いたと認めた。

 判決は、原告であるクリスチャントゥデイが「張牧師の信仰に関わりのある者が設立に関与し、現代表者の矢田も、過去にその信仰に関わっていたことが疑われること、原告やその関連組織の活動に、張牧師の信奉者が『使役(しえき)』として無償で従事したこと、原告の従業員が、張牧師の示唆を受けて、取材の便宜のために信仰を隠し、淀橋教会に所属したこと、張牧師の宣教師に入国の便宜を図ったこと、張牧師が、原告の記事の内容について指示を出していたことが認められる」とした一方、これらの事実が2003年から08年にかけての事実であり、ブログ記事が作成された19年の時点で、「同様の事実が繰り返され、あるいはその温床となるような組織体制が維持されていたと推認することはできない」とし、この部分に関する引用については名誉棄損にあたると認めた。

 被告の根田氏は今回の判決について、「クリスチャントゥデイがダビデ張氏の支配下にあること、ただのメディアではなく同氏が設立した教会・団体・企業で構成される『共同体』の一員であること、そのスタッフが張在亨の信者であり張牧師を『再臨のキリスト』と信じさせられていること、無報酬で使役させられた上に多額の献金や運営費用の肩代わりを要求され借金までさせられたことなどが事実認定された」として評価。

 「ブログの証言内容の真実性を認定したことは大きな成果であり、リスクを負って証言を世に問うた元従業員の名誉回復にもつながると思う」と話し、控訴については検討中であるとした。

 同氏が編集顧問を務める「異端・カルト110番」は判決を受け、クリスチャントゥデイが「張在亨氏の配下にある組織の一部」であることや、「張氏から指示を受けた事実を明確に認定したほか、信者らが無給で使役させられ献金するために借金が強要されることもあったことなど、これまでCT(クリスチャントゥデイ)が否認し続けてきた多くの虚偽の実態が明らかにされた」と報じた。

 クリスチャントゥデイは自らが原告となった今回の裁判について、判決翌日の4月23日に初めて言及。記事では判決理由などには触れず、「根田氏の行為を本紙の名誉を毀損する不法行為と認め、50万円の損害賠償を支払うよう命じる判決を言い渡した」とだけ報じた。また当該ブログの書き手であった「元従業員の男性」に対し損害賠償を求めて提訴したところ、「男性は、ブログの記事が『事実無根の表現を多数用いて貴社(本紙)の名誉、信用を著しく毀損するものであったことを認める』とともに、真摯に反省するとして謝罪。今後、同種の表現活動をしないことを約束するなどし、本紙と和解した」と補足。

 しかし、今回の判決ではこの「謝罪」をめぐっても「和解に応じる直前まで、原ブログの内容が、張牧師又はその『共同体』の元信者の取材に基づくものであるとの認識を示していたこと」「原告から訴えを提起されたのを機に精神的に追い詰められ、訴訟の終結を優先する意向を強めていたことを考慮すると……原告との訴訟による疲弊を避ける目的で、本件謝罪文等を作成したと認めるのが相当」であり、「本件謝罪文等によっても、原記事の内容の真実性は否定されない」と判断されている。

 本紙はクリスチャントゥデイ代表取締役社長の矢田氏にもコメントを求めたが、「公開済みの記事以上にコメントすることは特にない」との回答が寄せられた。

 判決で「共同体」への信仰を隠して信頼を得たと認定されたウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会主管牧師の峯野龍弘氏(クリスチャントゥデイ元代表取締役会長)は、判決の詳細について把握していないとしながら、「矢田氏も内田周作氏(副編集長)もともに当教会に在籍し、礼拝にも出席しており、忠実に仕えている。怪しいと思えるところは何もない」と変わらず擁護した。

*全文は5月11日付本紙に掲載。電子版(PDF)は以下のnoteでも購読可能。

https://note.com/macchan1109/n/n2de5dff5c32a

*6月13日(木)にはカルト問題キリスト教連絡会が主催する報告会が行われる。詳しい会場や時間は、申し込みフォーム(https://bit.ly/4dC0AOH)に記入し、承認された参加者に共有される。被告本人が判決で事実認定された内容の意義を話すほか、韓国でこの問題を追及し続けてきた「ニュースNジョイ」の記者からの報告、各国の情報を突き合わせてのパネルディスカッション、質疑応答・協議も行われる予定。申し込み締め切りは6月11日(火)。

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