「国際人種差別撤廃デー」で早尾貴紀氏が講演 ガザ侵攻を植民地主義・人種主義・構造的暴力から語る 2024年5月11日

 国際人種差別撤廃デー合同集会(マイノリティー宣教センター主催)が3月21日、日本キリスト教会柏木教会(東京都新宿区)とオンラインによるハイブリットで開催された。150人を超える参加者がオンライン視聴にエントリーし、会場には50人以上が集まった。

 集会は2部制で行われ、1部では『ユダヤとイスラエルのあいだ――民族/国民のアポリア』(青土社2008年、新装版2023年)、『パレスチナ/イスラエル論』(有志舎 2020年)=写真=の著者である早尾貴紀氏(東京経済大学教授)が「シオニズム運動における植民地主義(入植)の1世紀、構造的暴力(占領)の半世紀ーー〈10・7〉ガザ蜂起と軍事侵攻は突然始まったものではない」と題して講演した。

 早尾氏は、1990年代からパレスチナに関心を持ち、2002〜04年にかけて東エルサレムに在住しヘブライ大学及びハイファ大学客員研究員として、ヨルダン川西岸とガザ地区に何度も足を運びフィールドワークを行なっている。4年前に刊行した『パレスチナ/イスラエル論』の表紙の裏側には、「今イスラエル・パレスチナの問題は、直視することもできないほどの惨状にある」と書き、本文のガザ地区論の末尾では「全ての経済活動が阻害され、成長不可能であり、企業・経営・教育も破壊され、生存も危機に瀕しており、もはや通常の意味での社会は存続不可能になってしまった。10年後、ガザ地区は存在しているだろうか」と記している。

 講演では、イスラエル建国とその後の中東戦争、それに内部の対立を経てヨルダン川西岸地区とガザ地区にパレスチナが分断された1948年まで遡(さかのぼ)り、差別・植民・占領の歴史から浮かび上がってくる構造的暴力を明らかにした。その中で、形成されたのがガザ地区であり、住民のほとんどが難民で占められ、イスラエルはそのパレスチナ難民を敵視してきた。そこには、「宗教的確執」や「積年の信条の違いによる衝突」などではなく、イスラエル建国を強行した欧米世界の中東に対する人種主義と植民地主義があることを語った。

 また、ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」の成立過程や、活動なども丁寧に分析し、マスコミが報道するような「宗教対立」とか「暴力の連鎖」とかでは決して捉えきれないことを話し、「ハマスへの『報復』として、パレスチナの地ではイスラエルによる爆撃と封鎖が続き、目まぐるしく塗り替えられていく情況は決していま始まったわけではない」と力を込める。イスラエルのネタニヤフ首相のこれまでの発言にも注目し、「ガザ地区もヨルダン川西岸も抹消し、アメリカの仲介によってつくられたイスラエルを中心とした隣国ヨルダン、エジプト、さらに湾岸諸国をイスラエルの同盟国とする中東を描いている」という見解を示した。

 講演の最後では、宗教とシオニズムの問題についても触れた。ユダヤ教とシオニズムは全く別物だと断言。また、シオニズムを批判することで反ユダヤ主義になってはいけないと強調したうえで、シオニズムがレイシズム(植民地主義)とユダヤ人のための故郷をパレスチナに建設するために生じたナショナリズム運動であること、また、後になって宗教のロジックが混ざってしまったことを説明した。イスラエル国内では、ユダヤ教の教義に反して物理的にユダヤ教徒を集めて国家を形成するイスラエルを許容できないとする超正統派のユダヤ教徒らが、警察に連行されているという。

 早尾氏は、宗教のロジックがシオニズムに混ざってしまったのは、「ヨルダン川西岸とガザ地区を一挙に占領することでエルサレム・ベツレヘム・ヘブロンといった聖地が手に入ったイスラエルに生じた幻想」だと述べ、「そこに宗教的過激派が入植活動をして、宗教原理主義者と政治が結びついてしまった。宗教とナショナリズムが不幸にして結びついたといえる」と語った。

 集会の第2部では、各地のサテライト会場とオンラインでつながり、「私は夜祈る、夜弔う その朝がくるまで」と題して、いのちの抗いへの弾圧を受けた人々を追悼する時を持った。

 国際人種差別撤廃デーは、1966年の国連総会で制定された記念日。1960年3月21日、南アフリカのシャープビルで、人種隔離政策(アバルトヘイト)に反対するデモ行進に対して警官隊が発砲し、69人が死亡、180人を超える人々が重傷を負ったシャープビル虐殺事件が契機となり、国連で人種差別に取り組むようになった。マイノリティー宣教センター(東京都新宿区、共同主事:デイビット・マッキントッシュ)では、7年前からこの日に合わせて毎年、学びと祈りの時をもっている。

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