春季例大祭での参拝・真榊奉納にNCC靖国問題委が抗議 2024年5月21日
靖国神社の春季例大祭に合わせて岸田文雄首相が4月21日に「内閣総理大臣」の肩書きで真榊(まさかき)を奉納し、新藤義孝経済再生担当相と高市早苗経済安全保障担当相がそれぞれ21日と23日に参拝した。これに対し、日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会(星出卓也委員長)は4月29日、抗議声明を発出し、憲法第20条3項の「政教分離原則」に違反すると訴えた。
声明の全文は以下の通り。
首相及び閣僚の靖国神社春季例大祭での参拝、真榊奉納に抗議する
内閣総理大臣 岸田文雄 様
私たち日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会は、靖国神社の春季・秋季例大祭毎に、首相及び閣僚らが真榊奉納を行い、また参拝を続けていることに対して抗議を続けて来た。それにもかかわらず靖国神社春季例大祭にて岸田首相は21日に「内閣総理大臣」の肩書で真榊を奉納し、新藤義孝経済再生担当大臣は21日に、高市早苗経済安全保障担当大臣は23日に参拝した。首相及び閣僚が、政府を代表する公的な肩書をもって靖国神社に参拝及び真榊を奉納することは、日本国政府と一宗教法人である靖国神社とが特別な関係にあることを宣伝するものである。それは、日本国憲法第20条3項の「政教分離原則」に明らかに違反する。
たとえ奉納料を私費で支払ったとしても、「私的参拝」という言い訳は通用せず、公的な立場を背景に報道がなされていること自体、明らかに「公的」な性格であることを示している。
特に戦前戦中の「国家神道体制」は、学校教育などを通して全国民に一律に靖国神社の思想を教え、信じない例外を認めなかった負の歴史である。この国民に信じない自由を認めず、ことさら靖国神社の思想を強要した歴史を踏まえ、それを防止するために定められたものが「政教分離原則」である。この、かつて国家神道の中心的存在であった靖国神社に、首相及び閣僚らが参拝や真榊奉納を繰り返すことは、明白な政教分離原則違反であると共に、憲法尊重擁護義務を踏みにじるものである。
政府は、軍事費を拡大し、専守防衛を撤回して反撃能力を解禁し、米軍と一体化した自衛隊の軍事行動など、戦争に向かう異常事態を作り上げている。そのことで起こるであろう新たな戦死者を生み出す準備として、首相や閣僚らが靖国神社への参拝及び真榊奉納を意図的に行っているのではないかと危惧する。
首相及び閣僚らは、憲法の定める政教分離原則を厳格に遵守する義務を負っている。首相及び閣僚らが、一宗教法人である靖国神社の春季例大祭に、参拝や真榊を奉納したことを厳重に抗議する。今後、憲法第20条3項に定める「政教分離原則」規定、及び第89条の「公金の支出の禁止」規定を厳格に遵守し、靖国神社だけでなく、伊勢神宮においても同様の奉納や参拝を行わないよう強く求める。
2024年4月29日
日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会
委員長 星出卓也