天安門事件から35年 恒例のキリスト者有志による追悼祈祷文 香港紙「時代論壇」に掲載されず白紙に 2024年6月4日

 今年の6月4日で天安門事件から35周年を迎える。中国大陸では同事件を公に追悼することが禁じられているのに対し、香港では従来はビクトリア・パークでロウソクを灯す大規模な追悼集会が開催されていたが、2020年に香港国家安全維持法が可決されて以降は当局の許可が下りず、実質上禁止された状態となっている。

 そうした中、香港内外の著名な華人牧師・神学者を含む有志のキリスト者たちが、香港のキリスト教メディア「時代論壇」(Christian Times)に署名付きの天安門追悼祈祷文を毎年掲載しており、昨年も掲載されていた。今年も有志による祈祷文が作成され、約400名の署名が付され同紙1面に掲載される予定だったが、発行直前に急遽一転、掲載されないこととなり、第1面を白紙のままで発行するという異例の事態となった。

 同紙の当該号の社説では、この件についての直接の言及は避けつつも、次のように述べられている。「亡くなった人々に対して哀悼を捧げ、[遺族や生存者など]生きている人々に関心と配慮を示すことは、人として当然のことであり、善意と慈愛の表れでもある。信仰の観点から見れば、心から発せられる哀悼と関心と配慮、そして社会のより公正で平和な未来への希望の祈りは、主は必ずいつも聴き入れてくださる。その声の大きさにかかわらず、また人々がどこにいようとも」

 本紙は今回、関係者より独自に祈祷文を入手することができたため、以下に祈祷文の訳文を掲載する。

第1面が空白のまま発行された「時代論壇」。白紙部分の中央には、「今号の第1面記事は事情により発行できませんでした。読者の皆様にお詫び申し上げます。『時代論壇』編集部」とある。


声なきところで涙の祈りを聞き、長き夜に恵みの光を待ち望む
――天安門事件(六四事件)35周年記念祈祷文

 「バビロンの川のほとり/そこに座り、私たちは泣いた/シオンを思い出しながら」(詩篇137篇1節)

 天地を創造された三位一体の真の神、慈愛に満ちた父なる神よ、どうか私たちの祈りをお聞きください。

 昔のイスラエルの民は、捕囚の悲しみの日々にエルサレムの廃墟を思い出し、他人の冷たい目と嘲笑の中で、涙を流しました。

 毎年六月、私たちは主の恵みの座の前に集まって祈り、あの日の北京を思い出しています。

 天安門広場の白玉の彫刻(*訳注:広場中心の人民英雄記念碑を指すものと思われる)と、長安街の大通りの瓦礫で、どれだけ多くの若い命の熱き血が流れたことでしょう。

 35年の厳しい試練の時を経てもなお、権力による圧制と揺さぶりは、歴史の中でなお熱を帯び、記憶を残し続けています。

 たとえこの夜、星が輝いていなくても、たとえロウソクの光を灯すこと(*訳注:かつて毎年6月に香港のビクトリアパークでロウソクを灯して天安門事件追悼をしていた集会を指す)ができないとしても、私たちが主の驚くべき恵みの大きな光の中で、また魂の深きところで一本のロウソクを灯し、志半ばで終わってしまった彼らの意志を光の祈りの中で受け継ぎ、忘れないようにさせてください。

 主よ! 私たちの心に光を与えてください。

 「『誰が、キリストの愛から私たちを引き離すことができましょう。苦難か、行き詰まりか、迫害か、飢えか、裸か、危険か、剣か。私たちはあなたのゆえに、日夜、死にさらされ/屠られる羊と見なされています』と書いてあるとおりです。しかし、これらすべてのことにおいて、私たちは、私たちを愛してくださる方によって勝って余りあります」(ローマの信徒への手紙8章35~47節)

 主よ! 歴史の苦難は絶えず繰り返され、エルサレムはさまざまな時代の涙を流しました。

 放浪と捕囚の物語は、私たちの住む小さな島(香港)にも氷のように凝固しており、それは容易に溶けることはありません。

 権力の荒々しい手がさまざまな場所に伸び、人々を恐れさせ、委縮させています。

 主よ、どうか私たちが善と寛容と愛の力を保ち、社会の裂け目を修復するために祈り、正義と真理が社会から消えないようにそれらを守ることができますよう、教え導いてください。

 私たちは時代の痛みを経験しても、主に依り頼みつつ声を上げます。

 牢獄に捕らわれている者たちの魂と肉体が、また世界各地に離散している家族や友人たちが、平安と希望を得ることができますように。

 どれほど遠く離れた海も、どれほど冷たく高い壁も、私たちを主の愛から引き離すことはできません。

 たとえどんな状況や困難にあっても、主が私たちと共にいてくださるという「インマヌエル」の約束をしっかりと心に刻むことができますように。

 主よ! どうか私たちがなおも愛を保ち続けることができますように、導いてください。

 「恐れるな、私があなたと共にいる。たじろぐな、私があなたの神である。私はあなたを奮い立たせ、助け、私の勝利の右手で支える」(イザヤ書41章10節)

 正義の主よ、あなたは世の始めから終わりまで三位一体の真の神であり、アルファでありオメガであり、始めであり終わりであるお方です。

 聖な御子イエスは、「あなたがたには世で苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。私はすでに世に勝っている」(ヨハネによる福音書16章33節)との尊い約束を与えてくださいました。新しい天と新しい地が到来するのを待つ間、最後まで耐え忍ぶ者は必ず救いを受けると確信しています。

 どうか私たちに静かな心と、賢明な目と、強い意志をお与えください。

 私たちが自分だけの平安や安心を求めるのではなく、人々が苦難の中で「主が共におられない」と思ってしまうような時に、私たちの信仰の証しのゆえに、それら苦しむ魂が恵みの御座に近づくことができるようにしてください。

 彼らの涙を拭い、あなたの力強い御腕で私たちを強くし、助け、支えてください。

 混乱した世にあってもなお主の御旨を知り、キリストが再び来られる日まで、御旨を見極め、確信し、実践することができますように。

 主よ! 私たちに絶えず希望を保たせてください。

 キリスト・イエスの聖なる御名によって祈ります、アーメン。

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