来日のJ・モルトマン 「地球の日」を提唱 大地にも「安息日」を 【再録】1996年10月19日
J・モルトマン氏の訃報を受けて、1996年に来日した折の記事を再掲する。
モルトマン夫妻招聘委員会(喜田川信=日本キリスト教短大学長=委員長)の招きで来日していた、「希望の神学」で著名な世界的な神学者ユルゲン・モルトマン氏は10月5日の夜、東京・信濃町の日本基督教団信濃町教会で行った「現代の終末論」と題する連続講座の最終日、「地球の破壊と解放――エコロジー神学のために」と題して講演し、「人間よって苦しめられている地球の安息を祝うために、教会暦の中に『地球の日』を設けよう」と提案した。「母の日」や「労働聖日」の例もあるが、日本の教界はこの問いかけをどう受けとめるのか。
エコロジカルな〝捕囚〟の解釈
モルトマン氏は、3日、「個人的希望――輪廻か、永遠の生命の甦りか」、4日、「世界の終わり――世界の絶滅か、新しい創造か」と題して、個人及びその共同体としての世界の終末について語り、今日、地球のいのち自体が脅かされており、すべての被造物は人間と同等の、それ自体のために保護される権利があり、地球にも安息の日が必要であるとして、「地球の日」を設置するよう呼びかけた。
ドイツでは、チェルノブイリの原発事故以来、4月27日を「地球の日」として守られるようになっているという。この「地球の日」は、頭を下げて大地にひれ伏し、自然に対して人間が行ってきた収奪に対して許しを請い願い、人間が自然との交わりの中に受け入れられるように、神とノアとの契約を更新する、というためのものだと、モルトマン氏は説明した。
モルトマン氏は、地球の解放に向けての三つのキリスト教的観点について述べ、一つは宇宙的な霊性であるとして、「私たちに必要なのは三位一体の神の再発見なのだ」と語った。父、子、聖霊という完全な愛の交わりは互いのために互いの中に生きているように、人間と全被造物たちとの真の交わりが神の三位一体を映し出す。「互いの中に住み合うということは三位一体の神の秘儀である」(ヨハネ福音書17章21節、第一ヨハネ4章16節)と。
モルトマン氏によれば、神は人間ばかりでなく、人間と共にいるすべての生き物、地のすべての獣(けもの)と契約を立てた(創世記9章9~11節)。人間との契約から、人間の基本的人権が由来し、すべての生き物との契約から、被造物の権利が由来する。従って、「すべての被造物は神の契約の同士として尊敬されなければならない。被造物はそれ自体のために保護されなければならない」。
最後にモルトマン氏は、長い間、人間は、自然と人間の体を道具として、あるいは利用価値という面から見てきたが、創造者なる神は、「安息の祭り」をもって世界を完成された、と述べ、この祭りのために、すべての被造物をつくられた。もし、私たちが生き延びることを願うなら、この大地に神の安息を与え、祝わなければならない。そうしなければ、神は人間を「異国に追い散らし、……人間が敵の国にいる問、土地は安息し、その安息を楽しむ」(レビ記26章33節)ことになると警告した。
モルトマン氏は、「これはたいへん注目すべきエコロジカルな、〝捕囚〟の解釈である。われわれの終わりは、イスラエルの終わりに似ているかもしれない」とも警告した。