カマラ・ハリス米副大統領 複合的な宗教上のアイデンティティは今後のアメリカの縮図か 2024年7月27日
バイデン米大統領が7月21日、今秋の大統領選挙から撤退する意向を表明したことで、カマラ・ハリス副大統領が民主党の新たな大統領候補として現在最有力視されている。これまでハリス氏のプロフィールについては女性であること、またインド出身の母とジャマイカ出身の父をもつというその人種的背景が注目されてきた。これに対してハリス氏の「宗教」上のアイデンティティが注目されることは稀だが、実はこの点でも同氏はいくつかの点でユニークだ。
「レリジョン・ニュース・サービス」の報道(7月22日)によると、大統領候補としてのハリス氏の稀有な点は、自身の背景に多様な宗教を含んでいることである。カリフォルニア州出身の同氏はヒンドゥー教徒の母に育てられたが、成人後に黒人系のサンフランシスコ第三バプテスト教会の会員となり、今日でもキリスト教徒を自認する。他方、2014年に結婚した夫はユダヤ人で、夫婦はユダヤ教の通過儀礼や祭礼にも積極的に参加してきた。
このような複合的な宗教的来歴は、米国の大統領としては極めて異色である。だが実際にはこれは選挙戦の上でマイナスにはならず、むしろ今日のアメリカ人とりわけ若い世代は、このようなハリス氏の来歴にこそ親近感をもつのではないか、との見方がある。ペンシルベニア大学の宗教学者アンシア・バトラーによれば、以前のアメリカでは多くの人々が「ストレートな」宗教的出自をもっていた(例えば自分の先祖や両親、また配偶者がみなキリスト教徒であり、自分自身も生涯を通じてキリスト教徒である、というように)。しかし今日の若い世代はもはやそうではない。両親の宗教が異なっていたり、また本人が成長する過程で信仰や所属を切り替えたり、さらに宗教の異なるパートナーと結婚する、といったケースが極めて一般的になりつつある。ピュー・リサーチ・センターの統計では、2010年以降に結婚したアメリカ人のうち約40%が信仰の異なる相手と結婚しているという。こうした点において、「(ハリス氏は)たくさんのアメリカ人の宗教的物語を象徴している」とバトラー教授は指摘する。
単一の宗教に依らず、多様な宗教を自らの価値観や家族の中に包摂しているハリス氏は、今後のアメリカ人の縮図的な存在として有権者を魅了できるか。同氏の宗教的アイデンティティが選挙戦を通じてどう開示されるのか、また具体的な政策レベルでどう反映されるのか、今後目が離せない。
(翻訳協力=木村 智)