【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】 どんな罪でも許される? 白井幸子

Q.過去に犯したどんな罪でも、償って悔い改めれば許してもらえますか?(50代・男性)

 「キリストの贖(あがない)いによって、人間の犯したすべての罪は赦される」とは、聖書に書かれているもっとも重要な教えです。しかし、そのことは、もっとも信じがたい教えかもしれません。右のような質問が出てくるのも、理解ができます。

 ここに、他人の家に押し入ってそこの主人を殺した強盗の場合を考えてみましょう。

 強盗は罪を激しく悔いて、神と関係者に許しを請うに至ったとします。しかし、いかに謝られたとしても殺された人は生き返りません。家族の悲しみは消えません。父親なしに生きる母親と子どもたちの苦難の生活がこれから始まるのです。 「償って……」と質問には書かれていますが、人を殺すという行為はどのようにしても償いようがありません。

 考えてみれば、実際に殺さないまでも、人間は言葉でもって人の心を殺し、愛のない行為によって人の魂を殺し、悪意や憎しみの念によって人の喜びを圧殺するような罪を日常的に犯しつつある存在であり、それらの罪も本当には決して償うことができないように思われます。

 自分の罪に正面から向き合う人がいるならば、その人は自分に絶望して、ユダのごとく、自殺をするか狂うしかありません。人間にできることは罪を忘れて生きることです。しかし、罪を忘れることはできませんので、罪を負って、死んだごとく生きているのが人間の現実ではないでしょうか。 しかしキリストは、その死によって人間のすべての罪を負ってくださいました。

 他人に犯した罪、神に向かって犯した罪、それらも含めたすべての罪をキリストが負って神との和解をなしてくださった。2000年前に、神の深き愛によって信じがたいことがなされたと聖書は語ります。

 罪を背負った人はこの福音によって、初めて生きる力を与えられるのではないでしょうか。

 しらい・さちこ 青山学院大学文学部を卒業後、フルブライト交換留学生として渡米。アンドヴァー・ニュートン神学校、エール大学神学部卒業。東京いのちの電話主事、国立療養所多磨全生園カウンセラー、東京医科大学付属病院でHIVカウンセリングに従事した後、ルーテル学院大学大学院教授を経て同大名誉教授。臨床心理士、米国UCC教会牧師。

【既刊】『教会では聞けない「21世紀」信仰問答I -まずは基礎編』 上林順一郎監修

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