【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】 雨空の軒下で主を賛美せよ 梅崎須磨子 2024年8月1日
私の働く日本基督教団宇和島中町教会は、四国教区南予分区に属しています。14の教会・伝道所がありますが、一つの教会・伝道所に1人の教師が与えられているわけではありません。教師の辞任やあるいは休養によって、いくつかの教会は午後に礼拝を行うことにしていて、分区の、あるいは近隣の教会は説教者を派遣することで応援をしています。宇和島中町教会も分区の教会・伝道所のために祈り、派遣される教師たちのために祈り、時に教会のスケジュールを調整しながら教師を送り出しています。頻度はおよそ月2回です。地方教会には教師招聘が難しいといったさまざまな特有の課題がありますが、教会・伝道所間のつながりがあることは大きな強みの一つです。
ある主日、私は宇和島中町教会の礼拝を終えて、説教奉仕のために隣の教会の礼拝に出かけました。激しい雨の中40分ほど車を走らせ、もうすぐ目的地の教会に着くというところで、はたと気づきました。教会の鍵が、ない。この教会は会員の出席がなく、会員ではない数名が集まって礼拝をささげています。鍵を預かる信徒がおらず、代務教師も本務教会との距離があるため、教師間で鍵の受け渡しを繰り返しながら、その主日に奉仕する教師が鍵の開け閉めも行います。鍵は確かに受け取った、そして忘れないようにと玄関に置いた。のに、そうだ、置き忘れてきている……! もう5分もしないうちに教会に到着してしまう。取りに帰る余裕はない……。
どうしようと思っているうちに教会に到着してしまい、教会の軒下で、来られたお二人の信徒に事情を説明しました。どこかに礼拝できる場所がないだろうかと3人で考えてみるものの、雨天という状況もあって候補が見つかりません。開始時刻も迫ってきています。「う~ん……今日はここで礼拝しましょう」と提案し、軒先で立ったまま、3人で輪になるようにして礼拝を守りました。幸いにも、雨は徐々に激しさを失いつつありました。雨音に包まれて、柔らかな風を肌に感じながらの礼拝になりました。
礼拝の後、出席者のお一人が少し遠くを見つめながら、「こんな礼拝は初めてだなぁ」とおっしゃいました。そりゃあそうでしょう、教師が鍵を忘れて礼拝堂に入れないなんて! あまりにも単純な失敗で、だからこそたいへん申し訳ないと思いました。しかし、その方は照れたような笑顔で「今日はなんだか、とてもよかったです」と続けてくださったのです。翌々週にその教会の礼拝に出かけた教師は、この方から「この前、梅崎先生が鍵を忘れて……」と聞いたそうなのですが、「とても印象的な礼拝だった」と話されたことを知らせてくださいました。
鍵を忘れた張本人の私も(ちょっと言いにくいけれど)、あの軒下での礼拝で、雨を感じ、風を感じ、創造の神を体感し、被造物の一つとしての私たちを感じながら神を賛美することができて、実は清々しい気持ちになっていました。
悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださる神を私たちは讃えます。神の祝福は、限られた人々に、教会の中に独占されることはありません。神が大きく広く働かれる世界の中に今日も生かされていることを、神の祝福を隔てなく分かち合い賛美の歌声を響かせていく喜びを、教会の建物に入れないピンチの中で、また思わされたのでした。
うめさき・すまこ
1991年福岡県生まれ。2004年日本基督教団犀川教会(福岡県)にて受洗。2016年関西学院大学大学院神学研究科前期課程修了。甲山教会(広島県)主任担任教師を経て、2022年より宇和島中町教会(愛媛県)主任担任教師、附属鶴城幼稚園理事長・園長。