欧キリスト教インターネット会議でAIに関する会議を開催 「真理とは何か?」という根本的な問い 2024年9月12日
「ヨーロッパキリスト教インターネット会議」(ECIC)が、「真理とは何か? 人工知能の使用における倫理的および実践的問題」というテーマで9月9日に開催され、急速に変化する世界について多様な見識を持つ多数の講演者が集まった。世界教会協議会(WCC)が公式サイトで伝えた。
ECICネットワークの会長であり、ポーランド・アウグスブルク信仰告白福音教会の広報担当者でもあるアグニエシュカ・ゴドフレユフ=タルノゴルスカ氏は、真理を証しするためにこの世に来た(ヨハネによる福音書18章37節)という、ピラトに対するイエスの答えについての開会の祈りが、いかに今日の私たちへの方向性となっているかということにおいて、考察を加えた。
「真理は抽象的な概念ではなく、キリストという人格に根ざした生きた現実であることを思い出させてくれます」と彼女は語った。「私たちがキリスト教の伝達者としてデジタル技術を扱う時、アルゴリズムとデータがますます媒介する世界の真理の証人となるよう求められています」
彼女は、AI(人工知能)を取り巻く多くの倫理的および現実的な問題に言及した。「だからこそ私たちの仕事は重要なのです」「私たちは、AIとデジタル技術の使用方法を混乱させ、批判するよう求められているのです」
さらにAIを使用する際の透明性、公平性、説明責任を主張し、キリスト教の価値観と一致し、被造物を尊重し、人々に奉仕し、正義を守る技術の展望を推進することの重要性を繰り返し述べた。
「私たちは技術的な議論に人間的かつ精神的な視点を持ち込むことを学び、共有し、反映することを学ぶためにここにいます」「ECICネットワークは、私たちにとってAIのテーマを探求する機会です。私たちはお互いに深く考えるよう挑戦できるのであり、また知恵と勇気を与えて下さるよう、そして実を結ぶことができるように聖霊によって導いてくださるよう、共に神に祈ることができるのです」
第1回目のECICは、「世界キリスト教コミュニケーション協会(WACC)」の後援のもと、1996年11月22日から23日までドイツのフランクフルトで開催された。ECICがWCCによって主催されるのはこれで 2 回目。2014年のECICは、「開かれたインターネット、開かれた教会、開かれた情報源」をテーマに、2014年6月2日から5日まで、スイスのボセイにあるエキュメニカル研究所で開催された。
WCCが主催する今回のECICでは、WCCコミュニケーション部長のマリアンヌ・エイデルステン氏による開会のあいさつも行われた。「私たちは、大陸全体のキリスト教のさまざまな表現を反映し、幅広い教会やキリスト教団体を代表しています」とエイデルステン氏は述べた。「デジタル技術は私たちの世界と、私たちが暮らし、移動する複数の空間を変えつつあります」
エデルステン氏はさらに、「これらの技術は、私たち自身に情報をもたらして世界を渡り歩き、人間の尊厳と人権を主張し、数多くの声が聞こえるようにするための新しい伝達の方法を、私たちにもたらしています」と付け加え、次のように締めくくった。「ECICや他の場所での考察が、人工知能の開発形態の進歩が最終的に人類と平和の大義に役立つことを保証する取り組みを促進することを、私は願っています。それは一部の人々の責任ではなく、私たち全員の責任です」
将来の可能性と注意点
初日には、方法論、コミュニケーション、技術に関する小グループでの議論を促進するために、二つの基調講演が行われた。ジョージ・ザーカダキス博士は、「神、ロボット、心の理論 AIが私たちが作った他のものとどのように違うのか」について講演した。フィクションとノンフィクションの本の著者である彼は、保健データとAIの会社である「(株)シンデシス・ヘルス」の技術革新担当最高責任者でもある。彼は医学におけるAIの博士号を取得している。
ザルカダキス氏は講演の中で、「無生物が主体性を持ち、実際に心を持っているかもしれないという考えは、20世紀のAIの誕生よりもはるかに古い」と述べ、進化的特異点の地震波を先史時代の起源から現代に至るまで追跡し、考える機械への私たちの探求は単なる功利主義よりもさらに深く根本的なものであると主張した。「AIは、私たちの種を物理的境界を越える超越種に作り変えることができる技術です」と語った。「本質的に、これは人間が神のような特徴と能力を獲得することを意味します」
自分自身を「キャンセル」する、情報として再構築する、自分自身を解体する、自分自身を転送するなど、これまでフィクションの中にしか存在しなかった概念が、今では現実の可能性として現れつつあると指摘。「人間はあまりにも賢くなったので、機械の一部になってしまった」と彼は言う。 「今、人間は部分的に機械になっています」
ザルカダキス氏は、進歩を遂げるためにはAIが非常に重要であると信じている。「私が心配しているのは、それが社会にどのような影響を与えるかということです」
ケルン・キャンパスの研究コーディネーター兼メディア管理教授で、PRとコミュニケーション管理を専門とするホルガー・シーベルト教授は、「ヨーロッパの二つの大きな教会の(非)テーマとしての人工知能」というテーマで講演し、約1500人の教会職員を対象とした調査と、自身の現在の観察と勧告からの、実証的事実を提示した。
シーベルト氏は近年、デジタル化と教会に関して最も広範な実証研究を実施した。彼の大学はドイツで初めて、学生のプロジェクト作業でのAIの使用を明示的に許可した。「コロナ後もオンライン・サービスへの要望は依然として高い」と同氏は語った。「ドイツの教会員はデジタル化が進んでいないのではなく、よりデジタル化しています」
同氏は、2022年にはドイツの人口の25%が日常的にフェイスブックを使用しているという調査結果を伝えた。「教会ではインスタグラムが最上位にあり、人口の約60%がそれを利用しています」と彼は言う。
シーベルト氏は、「全体的に言えることは、ドイツでは一般人口に比べて教会員がデジタル化において1~3年先を行っているということです」と結論づけた。
WCCとカナダ教会協議会、ウェブ会議で人工知能に関する神学的視点を提示へ
一方、WCCとカナダ教会協議会(CCC)は、10月1日のウェブ会議「神学と人工知能 体系的および宗派的な視点」で、生成AIとトランスヒューマニズムが人格と神のイメージについての私たちの理解にどのように挑戦するかを探る。両協議会の共催によるこのウェブ会議は、人工知能に関する信仰と生命科学に関する一連のウェブ会議の2回目。
人工知能が世界中で関心と懸念を呼び起こし続ける中、神学者たちはAIが受肉と三位一体の意味にどのような影響を与えるかを研究していると、WCCは記した。
WCC中央委員会議長であるハインリッヒ・ベッドフォード=シュトローム博士・監督も主なエキュメニカルな講演者として登壇するという。
(エキュメニカル・ニュース・ジャパン)
写真=Ivars Kupcis/WCC