【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】 地域に生きる教会 中島和喜 2025年5月11日

「地方の教会あるある」だと思いますが、「宣教を」と言っても、そもそも人がいません。恵み野教会のある恵庭市の人口は7万人。また近年では珍しく人口が増加している地域でありましたが、個人的にはどこにそんなに人がいるんだと思うほど、教会の近くを通る人は少なく、夜になるとほぼゼロです。そのため、まず地域に生きる教会として存在をアピールするところから始めなければなりません。
恵み野教会では1年に1回、バザーを開いていました。長年続けてきたこともあり毎年多くの来場者が与えられます。とはいえ1年に1回しかありません。準備のたいへんさもあり、とても2回やろうなんて考えられません。そこで別の何かをできないだろうかと考えました。
何かを始める際に常に考慮したものは継続性です。一度きりであればがんばれるかもしれませんが、地域の方に受け入れられるには時間がかかりますので、単発で終わってはあまり意味がありません。一方で、労力をかけるものは長続きしません。そこでまず始めたのがクリスマスフェスタです。
内容としては、教会で2時間の枠だけ用意し、出演者を募集、出演者にはそれぞれ10~30分程度の出し物をしてもらうというイベントです。趣味として続けているものは、なかなか発表の場がありません。そういった方々にとって、ちょうど良い発表の場を提供することが目的でした。「何をやっても良いので出演しませんか」と地域誌やポスターで呼びかけたところ、初年度から教会以外からも4団体の申し込みがありました。マリンバの演奏や自作絵本の読み聞かせ、子どもたちのクリスマスの発表の場として、など。その中で牧師もクリスマスメッセージをさせていただいて。コロナ禍で3年中止した影響もありましたが、異動する前年には2時間の枠では足りないと思えるほど盛況になったことは嬉しい悲鳴でした。
もう一つ始めたものが、花の礼拝です。恵庭市は花の街として有名で自宅でガーデニングをされる方が多く、教会員の中にも好きな方は多くいます。もともとはペンテコステを盛大にするため、家庭で育てた花を持ってきてくださいという牧師の突拍子もないお願いから始まったのですが、ある日教会員から「今年のペンテコステの日程だと、花の時期ではないのであまり良い花を持ってこられません……」と、悲しげに言われました。私は花の街に住んでいながら、花を育てたこともなかったので考えもつかなかったのですが、大切なことは自分たちの思いが向くものをささげることであり、ペンテコステを盛大にすることではありません。そう考え、花の礼拝はペンテコステとは別にして、花の良い時期に開くことにしました。礼拝後にはその花を車に積んで、翌日に行われる函館教会の礼拝に持っていくところまでが花の礼拝の良いところです。自分たちだけでなく周りの人ともその喜びを分かち合う。それは、牧師が二つ以上の教会を兼務しているからこそ得られる恵みでありました。
クリスマスフェスタも花の礼拝も、その根底にあったのは「いつも喜んでいなさい(テサロニケの信徒への手紙一5章16節)」というみ言葉です。結局それらは人集めのためではなく、教会が喜んでいるかが問われる時だと考えています。ですから、無理をするのではなく、自分たちの自然な形でできることは何かを第一に考えました。それを考えるのはたいへんでもあり、しかし楽しいものでありました。何よりも、自然な形だからこそ、地域に生きる教会になるのだと感じました。
なかじま・かずき 1990年北海道生まれ。東洋大学、日本ルーテル神学校卒業。日本福音ルーテル大江教会主任牧師。これまで恵み野教会(北海道恵庭市)主任牧師として7年、その間、札幌教会(札幌市)の協力牧師を6年、函館教会(函館市)主任牧師を1年兼任。